常識外れの「低金利政策」日本にもたらした功罪 教養としての金利や問題点を考える【前編】

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1点目は、これらの政策がバブルを発生させる恐れがあるという点です。実際には、非伝統的金融政策の先駆者である日本でバブル的現象が広範にみられたというわけではありませんが、アメリカなどでは明らかにバブル的といえるような現象がいくつもみられます。

2021年末の時点で、アメリカの株式市場はいくつかの指標で歴史的にみて非常に割高とみられる水準にまで上昇しました。それは、好調な企業収益という実態を反映している部分もあるのですが、その一方で、たとえば業績のよくない特定の株がSNSなどで取り上げられて突然株価が何倍にも跳ね上がるというような現象もしばしば生まれています。

こうした株は“ミーム株”と呼ばれていますが、そこに群がる投資家は比較的経験の浅い個人投資家が多く、コロナ給付金などがその投資原資になっていることも多いといわれています。まさに金余りが生んだバブル的現象といえます。

また、仮想通貨(暗号資産)ブームも同様にバブル的現象といっていいでしょう。そもそも低金利にはリスク資産の価格上昇を促す効果があります。そしてリスク資産の価格上昇には、先ほど触れたように経済に刺激を与える効果がありますが、それが行き過ぎるとさまざまな弊害をもたらし、持続可能な状態ではなくなっていきます。

金余りと低金利が低成長を招く

続いて、非伝統的金融政策の弊害の2点目は、金余りと低金利が、かえって低成長を招いてしまう懸念があるということです。

低金利は本来、経済活動に刺激を与えるものですが、恒常的な低金利は、そうした低金利下でしか生き残れない企業(いわゆるゾンビ企業)を存続させ、経済全体の生産性、効率性を阻害する効果ももつと考えられています。

企業は、運転資金にしろ、設備投資資金にしろ、その金利負担を上回る利益率を上げなければその事業を維持することができません。

つまり金利は、企業が乗り越えなければならない収益率のハードルのなかでも最も基本的なもののひとつです。低金利はそのハードルを引き下げることにほかなりません。

もちろん、どんなに優れた技術やアイデアがある企業でも、運悪く業績が悪化してしまうときはあるでしょうから、低金利はそのような苦境から企業を救う役目を果たします。

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