常識外れの「低金利政策」日本にもたらした功罪 教養としての金利や問題点を考える【前編】

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1点目は、人為的につくり出された金融市場の金余りによって、銀行がその運用先を探すのに苦労をしているという面はあるものの、資金不足に陥る懸念は大きく払拭されていることが挙げられます。

予想外の経済ショックが襲ったとき、銀行が資金不足に陥ると、金融市場に混乱が広がり、金融システム全体が危機にさらされます。株式市場の暴落は、とくにそうしたときに起こりやすくなります。

ところが金融市場にお金があり余っていることで、予想外のショックが金融システム全体の危機につながる可能性が低くなり、したがって株式市場も大混乱に見舞われるリスクがそれだけ減ります。

そうした点が、株式相場を下支えする効果をもったと考えられるのです。

このような金融市場におけるあり余ったお金は、その多くが金融市場内でぐるぐる回ったり、国債の購入に向かったりします。いくら金融市場内でお金が増えても、実経済にそれが回っていかなければ、経済に刺激を与えることはできません。

それが、非伝統的金融政策が必ずしも明示的な経済効果を生んでいないようにみえる大きな原因と考えられますが、全体的にはそうであったとしても、あり余ったお金の一部がいろいろなところに向かって流れていくことはあるはずです。

非伝統的金融政策が株価上昇に影響

株式市場にも、そうしたお金の一部が流れ込み、それが相場を支えてきたことは十分に考えられることです。これが、非伝統的金融政策が株価上昇に影響をもたらしたと考えられる2点目です。

いずれにしても、株価が大きく上昇すれば、それによって利益を得た投資家が消費、とくに高額の消費を増やす効果が期待できるようになります。これは資産効果と呼ばれているものです。

また、自社の株価が上がれば、それが直接企業の財務に影響を与えるわけではありませんが、新たに低コストでの資金調達がやりやすくなり、経営者のマインドも改善するでしょうから、積極的な事業展開を期待できるようになります。

こうしたことから、株価の上昇は経済全体にとってポジティブなインパクトを与えるはずです。これらは、金融政策が本来意図したものとは少し違うかもしれませんが、非伝統的金融政策の効果として捉えることができるものです。

一方で、非伝統的金融政策には弊害や副作用の存在も指摘されています。この点については以下の点を指摘しておきましょう。

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