「トイレなぜ使用禁止?」開放できない深刻事情 厚意で貸しているのに…理不尽クレームに絶望

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かつて鷲林寺にあったトイレ(寺提供)(画像:弁護士ドットコムニュース)

ハイキングルートに設定されている兵庫県西宮市の「鷲林寺」では、檀信徒のためのトイレがハイカーによって40年以上にわたり汚されてきたことから、やむなく2022年に取り壊された。

それでもいまだにトイレ利用をもとめる人が後をたたない中で、旅行やハイキングのガイドブックが寺を「トイレ利用可」として紹介していることがわかった。

住職の藤原栄善さんがツイッターでその経緯を発信すると大きく話題になっただけでなく、出版社が寺に「確認のないまま掲載し、迷惑をかけた」として謝罪する事態に。藤原さんは取材に、トイレ利用と管理のあり方について考えるべきタイミングではないかと語る。(編集部・塚田賢慎)

40年間、無償で開放したトイレをやむなく撤去

鷲林寺では、寺や墓参りする人のために作った境内のトイレが、男女用ともに汚される事態が続いた。利用者の9割以上がハイカー。六甲山のハイキングコースの入り口として知られ、一部のハイカーたちのマナーのひどさが指摘された。

当記事は弁護士ドットコムニュース(運営:弁護士ドットコム)の提供記事です

住職になってから40年間。藤原さんは誰かわからない人が汚したトイレを掃除し続けたという。汚してもいいから拭いていってほしいと思いながら、トイレットペーパーの備品を持って行かれても、冬場に水を止めた蛇口をバールで壊されても、掃除を続けた。

見かねた檀家が「綺麗なトイレにすれば汚されない」と新しくトイレを寄進したものの、心ないハイカーの行動は変わらず、昨年11月にやむなくトイレを取り壊した。

「鷲林寺のトイレが汚い」というSNSへの書き込みを目にしたことも、その決断に影響した。親切でやっていることが、寺のネガティブな評判に影響するのであれば、続けるのにも限界がある。

「寄贈するので公衆トイレとしての管理を西宮市にお願いしたのですが、叶いませんでした。『有料にすれば?』という意見もありますが、駐車場経営など宗教活動に関係ないものは収益事業として課税対象になってしまう事情もあり、なかなか難しい。だから多くの寺のトイレは無料なんですよ」

こうした苦渋の決断を藤原さんがTwitterで発信したところ、多くの意見が寄せられ、複数のメディアも取材に訪れた。

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