風評被害に苦戦するいわき市のトマト農家。市では都内で農産物直販キャンペーンも
福島第一原発事故の影響を受けて、いわき市内のトマト農家にも大きな打撃が広がっている。放射線物質の検出量は福島県による食品衛生法上の暫定規制値を下回り、いわば、安全性が確認されて出荷制限の対象に入っていないにもかかわらず、福島圏外での購入が極端に落ち込んでしまっているのだ。風評被害の典型的なケースだろう。
いわき市は、冬物のハウストマトの出荷高では日本有数の産地だ。市の北方に位置する四倉町長友地域周辺にトマト生産農家が多い。広大な田園風景の中に、大きな園芸用ハウスが点在している。そのなかでも、ひときわ大きいハウス施設を擁しているのが「有限会社とまとランドいわき」だ。地元の主婦などが忙しそうに働いている。
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同社を訪れると、地元客が販売所に次々と訪れて、トマトを購入している。記者も試食してみたが、大変おいしいトマトだった。最新のハウス施設のなかでは、トマトのほかに、パプリカ、ブロッコリーなども生産している。品質の良さが高く評価されて、スーパーマーケットのほか、首都圏の高級ホテル、外食産業などにも納入してきた。
しかし、原発事故以来、状況は一変し、苦戦を強いられ続けている。同地域は原発から30キロメートル圏外にあるが、「福島県イコール原発」というイメージから、県外市場での販売の落ち込みが著しくなった。
「市場を通じて販売しようにも、県外では敬遠されてしまっている。今は県内で販売するしかないが、販売は大きく落ち込んだ」、と作業中の同社社員は言う。
単価も下落し、通常の半分から4分の1ほどの単価になってしまったという。同社では「とにかく、原発問題を速く解決してほしい。それから、当社の生産物の安全は確認されているので、首都圏など県外の方々は安心して購入していただきたい」(同)と訴える。
こうした農産物に関する風評被害を踏まえて、いわき市災害対策本部は「がんぱっぺ!いわき」のキャッチフレーズのもとで、風評被害を払拭するためのキャンペーン事業を始動させる。
その一環として、4月12日、13日には、東京都港区のJR新橋駅前などで同市の農産物の販売会を開催する。また、5月中には、市役所が作成した絵はがきを市民に配布し、市民が「いわきの農産物は安全」というメッセージを添えて知人などに郵送する、草の根運動も予定している。
(浪川 攻 =東洋経済オンライン)
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