ソニー、新型「エクスペリア」が抱える不安 狙いの国内市場基盤固めはできるか

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「Z4」ではきれいに自分撮りができるカメラ機能や、ワイヤレスでもハイレゾ相当の音質を楽しめる点が強み

デザインや楽しみ方を、前機種からそれぞれ進化させたのが、「Z4」といえる。しかし、左右が曲面の「エッジ」タイプを投入し、デザインを一新させた韓国サムスン電子の新機種「ギャラクシーS6」シリーズなどに比べると、既存の延長線上の進化という印象は否めない。

「Z4は大きさも、前機種の5.2インチと同じ。それ以上大きくなると、ニッチ市場になるため、今は5インチ前後が主戦場だ。しかし同市場は成熟化しており、差別化は容易ではない」と、MM総研の篠崎忠征氏は指摘する。

アンドロイド勢同士で消耗戦

これがXperia Z4

実際、ソニーのスマホは2011年度に国内販売台数311万台、シェア12%の4位から、2013年度には同484万台、シェア16%の2位にまで駆け上がったが、2014年度上期はシェア10%で3位に低下。目下シェア5割を超え、拡大を続ける米アップルのiPhone(アイフォーン)に比べ、アンドロイド勢同士の消耗戦はきつく、勢いは乏しい。

ソニーのモバイル事業は、従来13カ所あった世界の販売地域を、5カ所に絞り込むなど、組織のスリム化を進めている。2015年度までに中国など海外で2100人を削減するとも発表済みだ。

しかし、不採算の海外事業を絞る一方、「もっとも重要の市場」(十時氏)と位置付ける国内での収益確保が不可欠な状況は変わらない。「Z4」でどこまで新顧客を獲得できるか。新機種の国内での決戦は、夏場以降になる。

(撮影:梅谷秀司)

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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