トヨタ「カムリ」国内販売終了に見るセダンの行方 アメリカのベストセラー車も日本では振るわず

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9代目カムリ
2011年にデビューした9代目カムリ(写真:トヨタ自動車)

主力市場であるアメリカでは、より安価な直列4気筒のガソリンエンジン車がカムリ人気の中心であった。東京都江東区にあったMEGA WEBの特設コース内で、アメリカ仕様に試乗する機会があり、そこで直列4気筒ガソリンエンジンのカムリを運転してみると、瞬発力を活かしフリーウェイの流れに素早く乗れる加速性能が満たされ、一方で国内では特徴と思われた上質な乗り味は、アメリカで期待されていないかもしれないという実感を得た。

同じクルマでありながら、別の価値観を求められた開発は、容易でなかったのではないか。国内ではHV専用車として販売されながら、前型のような上質で広々とした贅沢な空間というハイブリッドならではの価値を実感しにくくなったのである。カムリを選ぶ理由が、ひとつ減った。

日本人がカムリに求めた価値

10代目カムリ
2017年にデビューした10代目カムリ。日本市場においては最後のモデルとなる(写真:トヨタ自動車)

根強い人気のある4ドアセダンとして、モデル3やメルセデス・ベンツ、あるいはBMWの名を冒頭で出したが、そこで述べたように、あえて選ぶ強固な理由がなければ国内で4ドアセダンは存続しにくい。トヨタの最上級車種であるクラウンも、まずはクロスオーバーという形態でモデルチェンジを行った。またRWDからFWDへ変更され、グローバルカーにもなって、ある意味でカムリの代替を担うこともできるだろう。

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アメリカでも2017年以降、乗用車販売で1位となったのはトヨタ「RAV4」である。SUV発祥の地とはいえ4ドアセダンの需要はそれなりにあるものの、1位の座はSUVへ譲らなければならない市況といえる。江戸時代から消費が流行に左右される日本では、4ドアセダンの存続がいっそう難しい様子をカムリの販売終了は物語っている。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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