トヨタ「カムリ」国内販売終了に見るセダンの行方 アメリカのベストセラー車も日本では振るわず

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テスラ モデル3
日本でも目にすることが増えたテスラのセダン「モデル3」(写真:テスラモーターズ ジャパン)

一方、輸入車は、電気自動車(EV)のテスラ「モデル3」を見かける機会が一時増え、メルセデス・ベンツやBMWの4ドアセダンもそれなりの存在感を示している。それらは、たとえば最先端という魅力であったり、歴史ある高級ブランドという重みだったりが、4ドアセダンの販売を支えているのではないか。

カムリ誕生の歴史

セリカ カムリ
1980年にデビューしたトヨタ「セリカ カムリ」(写真:トヨタ自動車)

トヨタ・カムリは、1980年に初代が誕生した。当初は、同じく後輪駆動(RWD)の4ドアセダンとして1977年に2代目へモデルチェンジしていた「カリーナ」の兄弟車であった。カリーナは、2ドアのスペシャリティカーである「セリカ」と共通のシャシーを用いた4ドアセダンで、走りのよいセダンとして「コロナ」と差別化した存在だった。1970年に初代カリーナは生まれ、2代目へモデルチェンジしたあと、それをもとにカムリは誕生したのである。

当時、国内のトヨタ販売店網は販売力強化のため多様化し、トヨペット店やトヨタ店と別にマークⅡ3兄弟の1車種であった「クレスタ」を販売する、上級志向のビスタと名乗る販売店系列があった。クレスタの下の車格として、カムリが設けられた経緯がある。販売店戦略のうえで選択肢を持つことが不可欠であったのだろう。ただし、「マークⅡ」や「チェイサー」という馴染みある車種に比べ、存在感のやや薄かったクレスタ同様、初代カムリは、カリーナとどう違うのかといった点で魅力が十分に伝わりにくかった記憶がある。

2代目カムリ
1982年にデビューした2代目カムリ(写真:トヨタ自動車)

誕生からわずか2年後の1982年に、カムリは2代目となり大きく転換した。RWDから前輪駆動(FWD)へ変わったのである。駆動方式の変更により、FWDの利点を最大に活かし、車体寸法に比べ室内がより広く、床もより平らな状態となって、これまでにないゆとりある空間が得られた。その室内はクラウンより広いとさえいわれ、視覚的にも実用的にもコロナやカリーナとの差別化が明らかになった。2代目カムリの登場は、4ドアセダンに快適な居住空間という新たな価値をもたらした。当時の強い印象は、今日なお記憶に残る。

次ページアメリカで15年連続販売トップに輝いたカムリの存在感
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