トヨタ「カムリ」国内販売終了に見るセダンの行方 アメリカのベストセラー車も日本では振るわず

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ホンダ・アコード
現在でも販売されている数少ない4ドアセダンのホンダ・アコード。左奥が初代アコード・サルーン、右手前が現行のアコードとなる(写真:本田技研工業)

広々とした車内は海外市場においても高く評価され、ことにアメリカ市場ではホンダ・アコードや日産「マキシマ」などとともに、熾烈な販売競争の駒として位置づけられることになる。そのアメリカでは、それまで乗用車販売1位であったアコードから、牙城を奪う人気車種となった。しかも首座は、2002年から2016年まで15年連続で守られた。

当時、カムリやアコードがアメリカのフォード「トーラス」などより上位の人気である理由を、現地に住む日本人は次のように語った。「アメリカでは人里離れた荒野を走る機会が少なくなく、もしそこでクルマが故障したら、命に関わる。日本車ならそうした不安がない」。また、日本車は古くても盗難にあいやすいという話もあって、背景にあるのは、部品として高く売れるからだという。盗難にあうこと自体は好ましくないが、それほどアメリカにおける日本車に対する安心や信頼は高かったのである。

アメリカ市場を意識した開発

6代目カムリ
1996年にデビューした6代目カムリ(写真:トヨタ自動車)

やがてカムリの新車開発は、アメリカを核とした商品企画が行われたのではないか。1996年には、それまでの5ナンバー車から3ナンバー車になった。ホンダ・アコードも1993年から3ナンバー車となっている。現行のカムリ開発に際して責任者は、アメリカからの要望で、まずなにより格好いいデザインを求めたと語っている。

2011年からは国内もハイブリッド車(HV)が設定され、それまでのガソリンエンジン車でも静かで滑らかな乗り心地がいっそう進化した。ゆとりある広々とした室内に座ると、静粛で滑らかな走りは上級4ドアセダンの趣で、贅沢な気分を味わえた。ところが、現行車は燃費のさらなる向上を求めハイブリッド用エンジンの熱効率が高められた。それによってエンジン騒音は逆に大きくなり、前型カムリの上質な乗り味は失われたのである。そこを指摘すると、トヨタの開発責任者も認めた。

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