のほほんと上がっている日本株の先行きが心配だ アメリカの景気や企業収益は想定通りに悪化中

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しかし、銀行危機がくすぶり続けている背景には、景気悪化で融資が伸びない状況の中で、昨年来の金利上昇(債券価格の下落)で銀行収益が傷んでいることが挙げられる。また、景気も冴えないことから、預金者が手元に現金が必要になって預金を引き出し気味だという要因もある。そのため、手放しで銀行の収益環境を楽観することも妥当ではない。

こうした根強い不安から、銀行の株価下落に歯止めがかかりにくい情勢が続き、投資家の警戒心が緩みにくかった。この「心理悪」が銀行以外の業種も含めて、アメリカの株価全般を抑制する方向で働いていた。

そこへ4日、大手通信社のロイターが、銀行株が売り込まれていることについて「連邦政府・州政府の関係者が『銀行株に関する市場操作の可能性について一段と注意を払っている』と語った」と報じた。

同日には、こうした報道の背景として、アメリカの銀行協会が、SEC(証券取引委員会)に書簡で「財務が良好にもかかわらず、大規模な空売りを受けている銀行がある」、あるいは「銀行株の空売りが市場を歪める」などと訴えていたことが明らかになった。

「SECへの警戒感」で銀行株が買い戻された?

確かに、銀行経営に対する漠然とした不安が強い中で、市場では、それに乗じて空売りで儲けようとする投機筋が増えて、それが銀行の株価を不当に押し下げてしまうという現象が起きていたのだろう。

もし、株価下落に歯止めがかからなければどうなるか。「市場はつねに正しいのだから、これだけ銀行の株価が下がるということは、何かその銀行について経営が危ういという確かな情報があるに違いない」と預金者が誤った判断を行いかねない。その結果、預金の取り付け騒ぎが広がって、実際に銀行を破綻させてしまうという事態も起こりかねない。そうした状況の中で、前述のような報道がなされたと推察される。

この4日の報道が、「SECが何らかの空売りの規制を行うのではないか」との憶測を翌5日に広げ、そのため、とくに銀行株について空売り筋が買い戻しを行ったようだ。これで銀行株が反発、市場全体にはいったん楽観的なムードが広がったことで、先週末のアメリカの株価指数が上昇した。筆者はそう判断している。

次ページ多くの市場は「正しく」動いているが、日本は楽観しすぎ?
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