あれから3年、日本初・官僚系YouTuberたちの現在 農水省の官僚が手掛ける「バズる動画」のその後

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「反応がいいとやっぱりうれしいものですね。BUZZ MAFFのよいところは、誰もが自由にのびのび表現できるところ。24チームがライバルでもあり仲間でもあって、とても楽しいです。もちろん悩みごとや成功事例は、Web会議で定期的に共有し合っています」(松本さん)

これからのBUZZ MAFF

農業の世界は、一般の人からは、縁遠くてよくわからない世界ともいわれる。この点について松本さんはこう語る。

「遠いと感じるのは心の距離であって、本当は身近な存在なのではないでしょうか。BUZZ MAFFは、この心理距離を近づけるための手段のひとつ。そのためにも、どうしたら消費者の心にすっと入れるのかを試行錯誤し続けています。

それに、広報は呼吸と一緒なのだと思います。自分がいくら知識や情報を吸収しても、誰かに届けないと役には立てません。発信すれば倍の情報が返ってきます。ですからとにかく、情報発信をすることと思っています」

松本さんは、省内に面白い人がいると聞いたらすぐに会いに行き、昼休みには学生さんの相談にも乗ったりしているそうだ。そうして常に自ら動くことで、情報の幅と鮮度の両面からより効果的な伝え方を探し続けている。

さて、職員の主体性を引き出し、期待を超えて国民との接点を広げてきたBUZZ MAFFを、農林水産省は今後どのようにしていきたいと考えているのだろうか。

「成しとげたいことは、行動変容につながる動画の実現です。農業現場のことをただ知っていただくだけでなく、だから国産農作物を買おうとか、食品ロスを減らそうといったような。それから海外の人に日本の農林水産物のことを知っていただいて、海外輸出量が増えるとかですね」(木元さん)

「もっと消費者の生活に密着した存在にしていきたいです。BUZZ MAFFの公募では、性別年齢役職は一切問われません。世代を問わずに巻き込むためには、若い人だけでは無理ですから」(松本さん)

役所の広報、役所からの情報発信は、面白い面白くない以前にわかりにくい。どうしてこんなにも不親切なのだろうと感じている場面も多いはずだ。背景には、正確さを重視するあまりに伝わりやすさについて妥協してきた前例、個人の主張を組織の見解に変換してきた組織風土がある。それがまさかYouTubeが突破口になるとは、本人たちこそ驚いているのではないだろうか。

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