あれから3年、日本初・官僚系YouTuberたちの現在 農水省の官僚が手掛ける「バズる動画」のその後

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続く4月には、江藤大臣の記者会見を宮崎弁でアフレコした「大臣にアフレコしてみた」もバズり、BUZZ MAFFは波に乗り始めた。この出来事をメディアが放っておくはずもなく、日本初の官僚系YouTuberはこうして市民権を得たのである。省内の見られ方も世の中からの見られ方も、まさに一変したそうだ。

官僚系YouTuberは成功しているといえるのか

さて、開始から3年を経たBUZZ MAFFは、成功しているといってよいのだろうか。お役所目線での現時点での自己評価についても話をきいた。

「費用対効果という観点では、計画以上にうまくいったいえるのではないかと思います。もともと省内では、大きな予算措置を講じない限り、広く広報することは難しいという考えがありましたから。いまでは、省内の施策をBUZZ MAFFで紹介してもらえないかという依頼も持ち込まれるようになっています。さらに他の省庁とのコラボも始まりました。担当者としてやりがいを感じるのは、自分たちの言葉で伝えることを意識する職員が増えてきている点ですね。入省理由に、BUZZ MAFFを見たからという声も結構あるんですよ」(木元さん)

(撮影:梅谷秀司)

再生回数とチャンネル登録者数を稼ぐこと自体が目的化してしまうYouTuberも中にはいる印象がある。その点は、どのようにコントロールしているのだろうか。

「数字は気にしますけれども、数字を追うことはしません。活動の方向性が変わらないようにです。日本の農業は地方にこそ宝がある。これを伝えるのが本来の目的ですから」(木元さん)

BUZZ MAFFにとどまらず、彼らの活動は、さらに広がりを見せている。

3年前の立ち上げメンバーの松本さんは、昨年4月に運営事務局を離れた。いまは広報誌『aff(あふ)』の編集をしながら、暮らし系公務員を名乗って広報室チャンネルで動画を配信している。つまり、運営側から、動画制作側に回ったわけだ。

松本さんは入省時から18年間広報室への異動を希望し続けてきた人だ。「自分の仕事の内容が世の中の人に伝わっているのかわからない」という疑問を抱え、プライベートで産地訪問するなどして、農業や農作物の魅力を個人ブログで発信し続けてきた経緯がある。

そこからBUZZ MAFF立ち上げメンバーになり、成功させてきた松本さんだが、いざ自分で動画を作ってみると、1本目も2本目もあまり見てもらえなかった。

そうした中、ある有名ユーチューバーの次のひと言が大きなヒントになったという。「高校生が教室で試せるレベルの内容にまとめる」。これを意識して作った3本目の『農水省職員のみかんのむき方』はヒット作となった。

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