なぜなら、実質賃金が上昇するような形で、インフレ率が上昇することはありえないし、現実世界で起きたことはほとんどないからだ。現在のアメリカ、英国、ほかの欧州各国などを見ればわかるように、賃金は上がっているが、それ以上に物価が上がっている。
インフレ率を抑えるために、賃金上昇率が低下することを祈っているのが欧米だし、世界でこれまで歴史的にも起きてきたことだ。実質賃金が上昇するときというのは、労働生産性および生産性が総合的に見て上昇するときで、それはインフレ率の上下とは独立に起きることなのだ。
このままだと永遠に金融緩和は終わらない
つまり、供給サイドの問題、生産サイド・実物経済の問題である。企業や労働者自身にしかできないことなのだ。だから、インフレをコントロールしようとする中央銀行が実質賃金を上げることは、絶対にできない。
さらに悪いことに、賃金上昇率がインフレ率を持続的に上回るまで待ち、それを達成するためにインフレ率を上げようとすれば、ほとんどのケースでは、実質賃金は下がるのだ。なぜなら、物価と賃金が同時に上がるという場合は、急激にインフレが起き、その結果、インフレに耐えられなくなった働き手が賃金引き上げを求めるという形で起きるからだ。
その場合、この賃上げに耐えられる雇用主は賃金を引き上げるが、そのほかの雇い手は、賃金以外のコストも上昇しており、それには耐えられないから、賃金を引き上げるよりも雇用維持で納得してもらおうとする。
すでにおわかりのとおり、ほとんどの日本の中小企業や、好調とはいえない大企業の現実は、これである。だから、「実質賃金が上昇する形での賃金と物価の好循環」というのは存在しないのだ。
それを政治家が知らないのはともかく、植田総裁が政治家のようなことを求めてしまっては、永遠に実現しない夢を見続けることになる。つまり、永遠に金融緩和は終わらないのである。ということは、国債バブルは続き、日本財政、日本経済は破綻することが必至なのである。
世界の金融市場がヤバい。しかし、どんな手を打っても完全に「詰んでしまった」というのに近い日本が、いちばんヤバいのだ。
(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースや競馬論を語るコーナーです。あらかじめご了承ください)
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