NTT、異例タッグに賭けた「日本勢復権」への道筋 KDDI、楽天とも提携、新技術で「6G」での覇権狙う
しかし過去を振り返ると、NTTは技術はあっても、それを普及させることが苦手だった。1999年にNTTドコモがサービスを始めた「iモード」は国内で一世を風靡したが、海外では端末からシステム、アプリケーションまで日本で普及した形をそのまま展開しようとした結果、ごく一部を除いてほとんど根付かなかった。
その反省を生かしたのが、冒頭のフォーラムだ。「(iモードの時のように)システムから端末まで完成形のものを輸出するのではなく、IOWNではオープンイノベーションで、いろいろな企業と(活用事例などを)作り上げていくアプローチをとった」(川添副社長)。
万全の体制をもって本格的に動き出したIOWNだが、復権への道のりは険しい。
調査会社、ガートナージャパンの池田武史バイスプレジデントアナリストは、「IOWNが実現を目指している技術領域は多岐にわたり、市場には手ごわい競合だらけだ」と指摘する。
例えば、光の技術を最大限に活用するためには、半導体のチップも光対応に置き換える必要がある。そうした光半導体を製造することになれば、半導体メーカーとの競争も不可避だ。
また、IOWNが柱とする技術領域の1つ、「デジタルツインコンピューティング」(現実世界を映し出したデジタルの空間で高度な演算を行い、正確な未来予測などを可能とする技術)では、アマゾン傘下のAWSなどが類似サービスの開発を進めており、GAFAをはじめとしたIT大手との衝突も予想される。
6Gに向けた抵抗勢力も少なからず存在する。5Gの“勝者”であるファーウェイは、低遅延などの点で5Gの性能をより拡張した「5.5G」という通信規格を提唱している。
ファーウェイの徐直軍・輪番会長(当時)は、3月末の決算説明会で「6Gのユーザーニーズが出てこなければ投資をしようと思う事業者も出てこず、(一般に2030年ころの商用化が見込まれる)6Gがいつ到来するかは不明だ。われわれは長い期間、5.5G通信を使って暮らすと考えるのが妥当だろう」と語っている。
フォーラム参加社も「同床異夢」の可能性
オープンイノベーションといえども、構想に対する本気度をめぐっては、フォーラムのメンバー間での温度差が想定される。IOWNの研究開発費や営業費用は各社がそれぞれ持ち出しでまかなう体制のため、その判断は各社に一任されている。「同床異夢」の状態となれば、NTTが期待するような連携効果は発揮できない。
参加企業の間で、将来的に競争が勃発する可能性もゼロではない。4月25日の総会に出席した、大手通信ベンダーのノキアの担当者は、「未来の市場をまず作る(ために協力する)ことが大事という考えで、フォーラムに参加した。競争するのはその後だ」と述べた。
NTTの川添副社長は「各企業の事業計画とのすり合わせが、今後いっそう重要になる」と気を引き締める。「絵に描いた餅」とならないよう、メンバーの足並みをそろえて構想を着実に前進させられるか。日本の復権の成否は、NTTの舵取りに懸かっている。
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