中国の夜行列車が高速化時代でも増える理由 最長列車は5000㎞、車中泊も当たり前なのに
これだけの距離を走ると車中1泊では済まず、所要時間は約55時間、車中3泊になる。ちなみに、最も長い時間をかけて走る列車は広州~ラサ間ではなく、長春~昆明間を結ぶ快速列車(日本の急行列車に相当)。所要時間は広州~ラサ間の特快より13時間長い、約68時間だ。
車両についても、さまざまな種類の個室寝台やサロン施設などを設けた『トワイライトエクスプレス』や『北斗星』ほどの多様性はないが、全体的にみればバラエティに富んでいる。
中国の夜行列車の多くは、4人用と6人用のボックス席が並ぶ「硬座車」、3段式開放寝台の「硬臥車」、2段式寝台を向かい合わせに並べた4人用個室寝台「軟臥車」、そして食堂車と荷物車で構成されている。
一部の夜行列車には、2段式寝台とソファ、トイレ、テレビを設けた2人用個室寝台「高級軟臥車」も連結されている。
日本でも1980年代までは、A寝台車とB寝台車、普通車、食堂車、荷物車で構成された夜行の急行列車が多数運行されていたが(急行の食堂車は1972年までに連結中止)、それとよく似た構成だ。実際に乗ってみると、車両の構成だけでなく列車内の雰囲気も1960~1980年代の日本の夜行列車に近く、この年代の記憶を持つ世代なら、どことなく懐かしさを覚えるに違いない。
一方で日本にはない、ユニークな夜行列車もある。たとえば広州や上海、北京などと海口を結ぶ夜行列車。海口は海南島北部に位置する海南省の省都で、当然ながら中国大陸とは陸続きではない。海峡部では、お客を乗せた列車をそのままフェリーに積み込み、海を渡るのだ。カーフェリーならぬ「トレインフェリー」といったところか。
最近の話題としては、高速車両を用いた夜行列車の存在が挙げられる。世界の高速列車で運用されている車両の多くは座席車で、それは中国の高速列車も同じだが、一部に寝台車を連結した高速車両もある。
JR東日本のE2系新幹線電車をベースにしたCRH2形の寝台車バージョン(CRH2E)は、外観こそE2系そっくりだが、車内に入ると個室寝台が並んでいる。まさに「寝台新幹線」だ。
高速鉄道の整備が進んでも、増殖する夜行列車
日本に比べ圧倒的な運行本数と走行距離を誇る中国の夜行列車だが、中国でも飛行機や高速鉄道といった高速交通が急速に発達している。
しかし、在来線を走る夜行列車は衰退していない。それどころか、中国の国鉄線を運営する中国鉄路総公司は、夜行列車の輸送力を強化している。
『全国鉄路旅客列車時刻表』で、中国の鉄道高速化計画が本格的に動き始めた頃の2007年10月と、それから7年以上が過ぎた今年1月の運行本数を比較してみた。昼行列車を含む全体の運行本数は2007年10月が約2600本、今年1月が倍の約5200本で、増加分の大半は短距離区間を結ぶ昼行の高速列車だった。一方、夜行列車は2007年10月が約1100本、今年1月が約1300本。中国はこの7年間で総延長1万6000kmに及ぶ高速鉄道を整備したが、それでも夜行列車は約200本も増えているのだ。
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