中国の夜行列車が高速化時代でも増える理由 最長列車は5000㎞、車中泊も当たり前なのに
日本語版の『中国鉄道時刻表』を2014年8月に創刊、この4月中には第2号を発行する中国鉄道時刻研究会の何ろく(王ヘンに力)氏によると、高速列車の利用は200~400kmの短距離区間が多い。
夜行列車はそれ以上の長距離帯での利用が多いという構図ができあがっており、高速列車と夜行列車は直接競合していないという。とはいえ、長距離区間なら所要時間が圧倒的に短い飛行機があるし、高速バスとの競争もあるはずだ。
何氏は「理由はいろいろあるが、一つは運賃。中国の夜行列車は圧倒的に安い」と話す。北京~上海間の場合、特快(約15時間)の硬臥が304.5元(約6090円)だが、飛行機(約2時間)は約1300元(約2万6000円)。格安チケットでも600元(約1万2000円)くらいはかかり、確かにその差は圧倒的だ。
最小で約6000円の価格差なら、15時間かかる夜行列車より2時間しかかからない飛行機を利用したいと考える人の方が多いと思うが、中国人の収入水準を考えれば、この価格差は日本人が考えている以上に大きいはずだ。西安電子科技大学の楊沢坤氏も「運賃の高い高速列車だけでなく、運賃の安い在来線の夜行列車も維持しなければ、(日本以上に経済格差が大きい)中国のさまざまな収入層に対応できない」とする。
一方、夜行バスの運賃は北京~上海間の場合、特快の硬臥とほぼ同じ300元(約6000円)前後。中国の夜行バスは車内に寝台を設けたタイプのものが多いが、それでも鉄道車両の寝台に比べれば狭苦しいし、所要時間も夜行列車に比べて長い。値段が同じなら、夜行列車を利用したいと考えるだろう。
運賃が値上げされても夜行列車は「不滅」か?
しかも、バスは乗客の死亡事故が多い。最近報道されたものに限ってみても、トラックと衝突・炎上して約40人が死亡(2014年7月)、横転して約20人が死亡(今年2月)、崖下に転落して約20人が死亡(今年3月)といった事故が起きている。
鉄道の場合、乗客40人が死亡した2011年の高速列車衝突事故は衝撃的だったが、それでも事故件数や死亡者数はバスに比べて少なく、「鉄道は安全な乗り物」と考える中国人は多い。 安い運賃と安全性。中国の夜行列車は、こうした要因に支えられて繁盛しているといえるだろう。
ただ、夜行列車の盛況が今後も続くかどうかはわからない。おカネのことを考えなければ、10時間以上かかる列車より、数時間で目的地に到達する飛行機を使いたいと考えるのが普通だし、各交通機関の運賃差が変化すれば、夜行列車が衰退に転じる可能性は捨てきれないだろう。
中国の場合、飛行機や高速鉄道などの運賃は、現在の消費水準にあわせて設定されている。その一方、夜行列車が走る在来線の旅客運賃は1995年からほとんど値上げされておらず、その後の物価上昇が反映されていない。
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