そして「トワイライト」は伝説になった 誰も知らない豪華寝台列車「ラストラン」秘話
多くの人が見守った、3月12~13日の「トワイライトエクスプレス」ラストラン。ファンやマスコミがおおいに盛り上がったその舞台裏で、もうひとつのドラマが展開されていたことをご存知だろうか。上り最終列車の料理長を務めた三浦伸敏チーフの話を中心にお届けする。
悪天候で最終列車のディナー用食材が届かない!
まずは時計の針を3月10日、「ラストラン2日前」に戻そう。トワイライトエクスプレスの食堂車クルー10人は、札幌駅到着後、車両基地に引き上げた列車内で待機していた。
通常なら、9時52分に札幌駅に到着すると、仮眠を取った後すぐに14時05分発の上り大阪行きに乗務する。しかし悪天候によって、10日の上り列車は運休が決定。夜になって、翌11日も運休が決まった。
残るは、12日発の最終列車のみ。一足先に乗務を終えるはずだったクルーたちは、思いがけずラストランに乗務することになった。だが、天候次第ではそれも運行できるかわからない。クルーたちはナプキンで「てるてる坊主」を作り食堂車に吊した。
翌11日、10人は札幌市内のホテルに移動した。冬は天候が荒れるため、こうした事態はさほど珍しくない。だが、よりによってラストランでもう一つ、思わぬ事態が発生した。最終列車のディナーの食材が届かないのだ。
トワイライトエクスプレスのフランス料理ディナーは完全予約制で、毎日必要な数が異なる。運休で日程がずれた場合、足りない食材は大阪から空輸することになっていた。ところが、悪天候により新千歳空港の滑走路が閉鎖され、食材が届かない事態となったのである。
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