そして「トワイライト」は伝説になった 誰も知らない豪華寝台列車「ラストラン」秘話

拡大
縮小

12時54分、定刻から1分ほど遅れて、上りトワイライトエクスプレスは終着・大阪駅に到着した。ホームでは約2000人のファンが出迎えたが、大きな混乱はない。

三浦チーフがホームに降りると、家族が迎えに来ていた。5歳の長男が、初めて見るような高ぶった顔をして、目に涙を浮かべている。

「子どもに、自分の晴れ舞台を見せられたなという思いでした。妻も息子も、私がトワイライトエクスプレスで働いていることを、誇らしく感じてくれていたようです」(三浦氏)

多くのファンと乗客に見送られ、12人のクルーは営業所に戻った。最後の点呼で一人ずつ挨拶をしたが、室巻マネージャーは言葉に詰まり、涙を流す人も多かったという。

大阪駅に到着、室巻智大マネージャー(中央)をはじめ、クルーたちはホッとした表情(乗客提供

「新たな夢」に向けて

3月13日を最後に、大阪-札幌間の運行を終了したトワイライトエクスプレス。JR西日本は5月からスイート・ロイヤルのみの豪華編成に組み替えて、ツアー専用のクルーズ列車として運行することを発表した。

同社管内でのクルーズ運行を通じて、2年後に登場する豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」の実証的な役割を果たすものと思われる。車内サービスは、従来からのスタッフが引き続き担当する見込みだ。

「私もいくつかの職場を経験してきましたが、トワイライトエクスプレスには、独特の愛着が生まれました」

三浦氏は、以前別の取材で会った時、「料理人としていつかは自分の店を持ちたい」と語っていた。そして、今はもうひとつ、新しい夢があるという。

「新しいトワイライトエクスプレスに乗務して、また誇りを持ってお客様をお迎えしたいです」

惜しまれながら運行を終了したトワイライトエクスプレスだが、そのサービスと伝統は今後も新しい列車に引き継がれていくことだろう。

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情
日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情
パチンコ業界で「キャッシュレス」進まぬ複雑背景
パチンコ業界で「キャッシュレス」進まぬ複雑背景
ヤマト、EC宅配増でも連続減益の悩ましい事情
ヤマト、EC宅配増でも連続減益の悩ましい事情
半導体需給に変調の兆し、歴史的な逼迫は終焉?
半導体需給に変調の兆し、歴史的な逼迫は終焉?
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT