「BEVのデザイン」比較で見るメーカーの狙い 自由度の高いBEVの進化は始まったばかり

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続いてインテリア。こちらはチャートを見ればおわかりのとおり、アリア/アイオニック5/モデルYは、シンプル&モダンというテイストが共通している。

インテリアのチャート

日本らしさを織り込んだアリア、アヴァンギャルドなアイオニック5、ミニマムなモデルYという持ち味も同じ。内外装で統一感が取れていると感じる。

中でも印象的なのは、セダンの「モデル3」に続き、インパネ中央の大きなディスプレイに速度計を含めたあらゆる情報を表示するモデルYだ。エアコンのルーバーもインパネの段差に埋め込まれ、スイッチはステアリングにあるぐらいで、圧倒的なシンプルさを誇る。

テスラ モデルYのインテリア(写真:Tesla)

アリアとアイオニック5は、横長のメーターとセンターディスプレイをつなげた造形こそ通じるものの、それ以外の部分では直線基調のアイオニック5に対して、アリアは適度に柔らかいラインを取り入れていて、これが雰囲気の違いにつながっている。

日産 アリアのインテリア(写真:日産自動車)
ヒョンデ アイオニック5のインテリア(筆者撮影)

bZ4X/ソルテラは、エクステリアと比べるとかなりシンプルな仕立て。ただし、メーターとセンターディスプレイを完全に分けたり、センターコンソールを高めにレイアウトしたりしていて、スポーティな演出をしている点は外観と共通だ。

スバル ソルテラのインテリア(筆者撮影)

インテリアがいちばん目立つのは、ATTO3だ。スポーツジムをイメージしたというインパネ、ギターの弦をモチーフにしたドアポケットなど、いい意味で遊んでいる。縦/横に90°回転可能なセンターディスプレイは、タブレットからの発想だろう。

BYD ATTO3のインテリア(筆者撮影)

新しさとブランドイメージ

操作系では、ドライブセレクターに目を向けたい。エンジン車やハイブリッド車では前席間にレバーを置くのが一般的だが、ここで紹介する車種でこのタイプはATTO3だけ。アリアはマウス風、bZ4X/ソルテラはダイヤルで、アイオニック5とモデルYはコラムレバー、さらにID.4はメーターパネル脇のアイロンのようなノブを捻る。

フォルクスワーゲン ID.4のドライブセレクター(写真:フォルクスワーゲン グループ ジャパン)

個人的には、この部分がBEVデザインの面白さを象徴していると思う。駆動用モーターはエンジンより小さいうえに、多くの操作系を電気信号でコントロールするのが前提の設計なので、デザインの自由度が高いからだ。

いい意味で伝統を断ち切った造形に挑戦できる一方、新しさの中にブランドイメージをどう盛り込んでいくかもポイントになるだろう。これから各メーカーやブランドが、BEVでどういうフォルムやディテールを提示してくるか、楽しみにしている。

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森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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