ここへ再び世界は激震に襲われる。2014年のロシアによるクリミア併合である。ウクライナの主権が侵害され、一方的にロシアに領土が奪われるという事態が発生する。
この年のG8サミットは、冬季五輪大会が終了したばかりのロシアのソチで行われる予定であったが、7カ国は急遽EU(欧州連合)本部があるブリュッセルに集合する。ごく自然な形で、G8は再びG7に回帰していくことになる。
あらためてロシアが抜けてみると、「価値観を同じくする仲間」であるG7のまとまりは急によくなった。アメリカのドナルド・トランプ大統領の扱いに苦慮する場面もあったけれども、2019年の仏ビアリッツサミットからは、再び2泊3日方式に戻っている。2020年にはコロナによる初めての中断を挟むものの、今回の広島サミットに至ることになる。
3つの歴史的教訓を踏まえた「日本の立ち位置」とは?
以上、漫談風にサミットの歴史を振り返ってきたが、ここから得られる教訓は3つあると思う。
第1に、半世紀近いG7サミットの歴史とは、ロシアと対峙し、ロシアを取り込もうとして、最終的に失敗した経緯である。やはり西側先進国から見て、ロシアは「異物」であったのだ。ロシア側は、当然G7を快く思っていない。いわんやプーチン大統領においておや。現状のウクライナ戦争に対して、G7が果たしうる役割に過大な期待は禁物である。
第2に、サミットにはつねに官僚的肥大化やセレモニー化の傾向がつきまとう。とくに「G7の一員」であることを金看板としている日本外交としては、ついつい手間やおカネをかけたくなるところであるが、今はむしろ原点回帰が必要な局面であろう。「今どきG7をありがたがるのは日本だけ」と、ときどき自分自身にツッコミを入れたいところである。
第3に、それでもG7には一定のパワーがある。「継続は力なり」というやつで、これまでキッチリ活動を続けてきたことは誰もが認めるところだ。問題はこのG7が、ときどき世界全体の中で「浮いた」存在になることである。「西側先進国とは、人権や気候変動問題で新興国に説教したがる『意識高い系』の人たち」と見られていることは否定できない。
そんな中で、いわゆる「グローバルサウス」の国々との間の接点となるのは、日本の重要な役どころといえるのではないか。広島サミットはぜひ、そうあるべきであろう。「アジアで唯一のG7メンバー国」であることは、間違いなく日本の金看板なのだから。
(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)
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