ベルギーで「仏教の教え」が支持を得ている理由 信者は約15万人、正式な宗教としても認定

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「体は少しずつ、身体と精神が一体となった喜びという、本来の状態を取り戻していくのです」とエルヴォーさんは説明する。

マインドフルネスをはじめ、禅宗の伝統に基づくさまざまな瞑想技術は、今では非常に人気があるほか、瞑想は科学的に人を癒す効果があることが証明されています。最近はスポーツ選手からビジネスピープルまで幅広い人が瞑想を実践しています。中には精神的に強くなるために行っている人もいますが、エルヴォーさんによれば、これは自分のエゴに集中しすぎており、禅の趣旨とは逆行するものだといいます。

ヨーロッパ人の支持を集める背景

現在の情報社会では、私たちはつねに多くのことを考えさせられる状態にあります。禅の修行を通して、私たちは、自分が何をしているのかわからないまま、つねに何かを探してさまよい続ける、という状態を断ち切ることができるのです。

禅の瞑想で大切なのは「今この瞬間」であり、未来ではありません。「目を開いて今を生きる。これが禅の修行であり、私たちの最も具体的な日々の営みのすべてです。私たちの日常生活はとてもシンプルですが、そこに注目することが真に重要なことなのです」とエルヴォーさんは説きます。

「瞑想の中で、私たちは穏やかな気持ちになり、自分の自由を実現し、この広大な世界に存在するすべてのものと一体化することに安らぎを覚えることができるのです」

国家間の衝突や民族間の争い、ネットで絶え間なく繰り広げられる小競り合いや誹謗中傷――。世の中の至る所で争いが起きる中、仏教の「非暴力」のイメージは今でも強く、このことはヨーロッパにおける仏教人気を後押ししているのです。

ドラ・トーザン 国際ジャーナリスト、エッセイスト

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Dora Tauzin

フランス・パリ生まれの生粋のパリジェンヌ。ソルボンヌ大学、パリ政治学院卒業。国連本部広報部に勤務ののち、NHKテレビ『フランス語会話』に出演。日本とフランスの懸け橋として、新聞・雑誌への執筆、テレビ・ラジオのコメンテーター、講演会など多方面で活躍。著書に『フランス式いつでもどこでも自分らしく』『パリジェンヌはいくつになっても人生を楽しむ』『好きなことだけで生きる』などがある。2015年、レジオン・ドヌール勲章を受章。公式ホームページはこちら、 Facebookはこちら

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