隈研吾 建築家・東京大学教授--日本の職人の技術を世界が渇望している

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--そうした職人の技術は他国には簡単にまねできないものですか?

これはいちばん追いつきにくい。ビジネスの世界は、MBAなどの教育システムがある程度完成されている。だが職人の技というのは、何千年かけてできあがったものなので、簡単にまねできない。それに加えて、日本人は、色や質感や光に対しての感受性が明らかに優れている。

私は中国や韓国の大学でも教えているが、批評をさせると、中国、韓国の学生は積極的にしゃべるのに、日本の学生はしょぼんとしている。でも、言葉が下手な分、日本人は内にこもって物に命を懸けるところがあり、すごく高レベルの物を作る。一方、中国人はしゃべるのは得意だが、不思議なくらいスター建築家が出てこない。やっぱり得手不得手があるのではないかと思う。

--これから世界で活躍する日本人が生まれてくるのでしょうか。

私は将来をまったく悲観していない。金融などのバーチャルな領域よりむしろ、リアルでドメスティックな領域のほうから、海外で役に立つ日本人が出てくると思う。たとえば調理人。日本料理は日本人しかうまく作れない。これから海外に出る日本人のライフスタイルは、かつての「駐在員」よりも、「華僑」に近いものになるはず。どこの場所に行っても自分のアイデンティティを失わない「和僑」が生まれてくると思う。

くま・けんご
1954年生まれ。東京大学大学院修了。コロンビア大学客員研究員などを経て隈研吾建築都市設計事務所を設立。日本を代表する建築家の一人。『負ける建築』など著書多数。

(撮影:引地信彦 =週刊東洋経済2011年4月2日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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