ナイキが証明!「政治的に正しい方が儲かる」理由 「意識高い系」と「意識低い系」の2つの資本主義

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たしかに、「意識高い系」のセレブたち(レオナルド・ディカプリオとか)が気候変動サミットにプライベートジェットで乗りつけるさまを見ていると、「彼らの政治的信念の信憑性、少なくともその一貫性についてはシニカルにならざるをえない」のもわかる(19-20頁)。

アマゾンの元CEOジェフ・ベゾスは「気候変動がわたしたちが住むこの惑星に与える壊滅的な影響と闘うため」の基金に100億ドルを寄付した。政治的にはまことに正しい行為である。

だが、その一方で、アマゾンはありとあらゆる手立てを講じて納税を回避している。「2010年から2019年までの間に、アマゾンは9605億ドルの収益を上げ、268億ドルの利益を蓄積したが、納めた税金は34億ドルだった。(…)2018年に、アマゾンは110億ドルの利益を上げたにもかかわらず、アメリカで法人税をまったく払っていない。2019年の利益は130億ドルだったが、実効税率はわずか1.2%だった」(165頁)。

アマゾンがフェイスブック、グーグル、ネットフリックス、アップル、マイクロソフトなど「法人税逃れのならず者たち」の中でも「最大の悪党」と呼ばれても「驚くには当たらない」と著者は書いている(166頁)。

ナイキとトランプの全面戦争

NFLのスター選手コリン・キャパニックは2016年に試合開始前の国歌斉唱を拒否し、膝をつくというパフォーマンスによって、「アフリカ系アメリカ人の権利を求める公然たる不屈の政治的アクティヴィズム」(202頁)のシンボルとなった。彼はインタビューに対して「黒人や有色人種を抑圧する国の国旗に誇りを示すために立ち上がるつもりはありません」とその行為を説明した。彼はそのシーズンの間国歌斉唱のたびに膝をついて、全米に賛否の論争を巻き起こした。支持者たちからは「新しい公民権運動の顔」と称され、ドナルド・トランプは「あのクソ野郎を今すぐにフィールドから追い出せ」とNFLのオーナーたちを煽った。

その結果、NFLはキャパニックの行動を「自分たちの商業的利益にならない」と判断して、次のシーズンに彼と契約するチームは一つもなく、キャパニックは早すぎるリタイアを迎えることになった。

ところが、2018年9月NFL開幕直前に、キャパニックは「何かを信じろ、たとえすべてを犠牲にすることになっても#Just do it」というツイートをした。Just do itはナイキのスローガンである。そして、その後ナイキは「ドリーム・クレイジー(とことん夢みろ)」という大規模な広告キャンペーンを展開した。TVCMのナレーションを担当したのはキャパニック。彼は「どんな障害があっても、自分の夢を追いかけよう」と呼びかけた(201頁)。

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