ナイキが証明!「政治的に正しい方が儲かる」理由 「意識高い系」と「意識低い系」の2つの資本主義

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トランプは激怒し、このキャンペーンのせいでナイキは「怒りとボイコットのせいで息の根を止められるだろう」と予言した。同時に、トランプは、キャパニックの「非愛国」的ふるまいのせいで、アメリカ人たちはフットボールの試合をテレビで観ることを止め、それがNFLに莫大な損害を与えるだろうとも予言した。

この時トランプは図らずもアメリカにおける右派の三つの伝統的立場を明らかにした。1つは「伝統的な愛国者は国旗国歌に敬意を示すべきである」、つは「資本家は雇用している労働者を支配できる」、1つは「ある種の政治的主張は経済リスクを伴う」である。愛国心、労使関係、政治的主張と商業的利益の関係、3つの大きな論件をトランプはキャパニックの一件で前景化してみせた(わずかな語数で問題の本質を明らかにできるという点でたしかにドナルド・トランプは一種の天才である)。

これに対してナイキは「正反対の商業的・政治的論理」(209頁)を掲げているトランプと全面戦争に入ることを選択をした。

「愛国的であるとはどのような行為のことを指すのか」、「労働者は資本家に対してどのようにして自分たちの権利を守るべきか」。この2つはいわば「近代的な」問いである。さまざまな人がこれまでそれぞれの知見を語ってきた。でも、第三の問いは違う。これは近代においてはたぶん一度も(マルクスによっても、ウェーバーによっても)立てられたことのない問いである。それは「政治的に正しくふるまうことは、そうでない場合よりも多くの経済的なベネフィットをもたらすか?」である。

そして、2018年にナイキはこの問いに「政治的に正しいほうが儲かる」という答えを出してみせた。

ナイキの「ドリーム・クレイジー」キャンペーンは最終的に大成功を収めた。「大手企業がキャパニックのアクティヴィストとしての大義を支援することに、感銘を受けた左派の人々もいた。(…)揺るぎない政治的信念を持つ人と関わるリスクは十分に報われた」のである(212頁)。このキャンペーンの後、ナイキの株価は5%上昇し、時価総額は60億ドル増加したからである。

ナイキの「スウェットショップ問題」

だが、これをwoke capitalismの圧倒的勝利と見なしてよいのだろうか。これに対して著者はいくつかの留保をつける。

1つはアマゾンにおける租税回避と同じように、ナイキは「スウェットショップ問題」を抱えているからである。

sweat shopとは「搾取工場」、低賃金労働者が違法な労働条件で酷使される工場を意味する。90年代にナイキの製造工場の非人道的な低賃金と過酷な労働を扱ったドキュメンタリー映画が公開された時、それは世界的なスキャンダルを引き起こした。ナイキは労働条件の改善を約束したが、いまだ十分には実現していない。

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