ゆうパック「下請けたたき」値上げ拒否の代償 社内調査で判明、横領・窃盗など深刻な弊害も
また、これまで各郵便局が下請けから要望を受けた際に、どう記録し、どのタイミングで支社に報告するか、本社と連携するかなど、手続きを明確化できていなかった。今後は書類ベースでの管理を見直し、電子化するなどで手続きの漏れを防ぐ構えだ。
現在は約5500件すべての委託契約について見直し協議を進めており、4月10日時点で2割弱が完了した。物価上昇もあるため、すべての契約の委託料を引き上げる方針だ。この原資については「会社全体の予算から生み出して実施する」など明確な説明はなかった。
日本郵便は今秋、燃料高騰や人件費上昇などを織り込み、ゆうパックの料金を値上げする予定だ。今回の全面的な契約見直しとは関係ないとしているが、一段のコスト増となれば手当ては必須。秋以降に再度の値上げに踏み切る可能性もありそうだ。
契約外の作業を押し付ける
今回公表した事例には、単に認識不足が原因とは考えられない例もあった。毎年秋ごろ、営業用のタオルを郵便局から業者に無償で配達させていたというものだ。
1つの郵便局で発覚したものだが、契約にない作業を無償で押し付ける行為は単なる下請けいじめだ。「あってはならないこと。詳細を確認し、業者にお金を支払うことを最優先で進めている」(担当者)。この件についての処分はなされていない。事実関係を確認した上で対応するという。
下請けに対して厳しい取引を持ちかけるのは、物流業界の根深い問題と言える。2022年に公正取引委員会が物流業界を対象に行った調査(3万社の荷主と4万社の物流事業者が対象)で、運送会社からもっとも多く寄せられた回答は「買いたたき」。それに「不当な利益提供の要請」が続いた。
日本郵便も荷主企業からこうした取引を持ちかけられたら苦しいはずだ。郵便物やゆうパックの配達は、下請けの協力なくして成り立たない。委託先との関係は根本から見直す必要がある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら