新入社員でもわかる「金融危機」とは何なのか 6つの過去事例から読み取る危機発生の真因

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幸いにも今回の金融機関の破綻では、アメリカやスイスの中央銀行が素早い対応をしたおかげで、連鎖がストップしつつあるように見える。とはいえ、これで金融危機の懸念がおさまったかどうかは誰にもわかっていない。

現在、欧米でくすぶり続けている景気後退懸念が、今後再び金融危機を引き起こす可能性はある。そうなれば、当然日本にも影響が及ぶ。高度にデジタル化された金融マーケットは、世界中のどこかで金融危機が起これば、即座に世界中に連鎖する状況になっており、現在の最先端の金融マーケットの脆さとも言える。

日本にも金融危機の可能性がある?

さらに、日本発の金融危機もありうる。先日破綻したアメリカのシリコンバレー銀行やシグネチャー銀行では、金利の上昇によって債券価格が下落したことが原因となったが、日本も日本銀行が政府の発行する国債の50%以上を買い占め、金利を引き下げる金融緩和策をとり続けており、今後その金融緩和策を転換するときには、大きな影響が出る。

金融政策の転換時には金利が跳ね上がる。金利が上昇することで、国債の価格は下落し、保有している金融機関は損失を負うことになる。

シリコンバレー銀行やシグネチャー銀行では、TwitterなどのSNSで銀行の経営破綻の噂が流れ、PCやスマホを経由して一斉に預金が引き出されるというデジタル時代特有の取り付け騒ぎが起きた。日本の金融機関が損失を被れば、同様の動きが出る可能性も否定できない。

その結果、経営破綻する銀行が出てくる可能性もある。金融危機に対して個人ができることは少ないが、たとえば銀行預金だけで資産づくりをしようと思わず、株式や金、暗号通貨といった多様性のある資産構成を心がけるといいかもしれない。 

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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