インバウンド商戦が復活、売れ筋商品は様変わり 百貨店の訪日客急増、中国偏重の戦略見直しも
足元のインバウンド消費を牽引するのは、中国以外の東アジア諸国・地域。とくに台湾の伸び率が大きく、コロナ禍前だと1桁台前半だった免税売上高のシェアは、足元では2~3割にまで上昇した。香港や韓国のシェア上昇も顕著という。
そうした来店客の国籍の分散化を受け、高島屋では従来は中国向けがメインだったプロモーション施策の方針を修正。グーグルマップに表示する店舗情報では今年1月から韓国語への対応を開始したほか、台湾など東アジア向けの旅行情報サイトに広告を出稿するなど、多方面へ情報発信を強化している。
インバウンド消費が徐々にコロナ禍前の水準に近づきつつある一方、外国人客が購入する商品は様変わりしている。
売れ筋は化粧品から高級ブランドへ
コロナ禍前では、外国人客が購入する商品の代表格は日系ブランドを中心とした化粧品だった。とくに中国人客の「爆買い」は強力で、家族や親類などへの土産として数十個単位で購入する事例も多かった。一部の百貨店ではインバウンド対応として化粧品フロアを増床するなど、旺盛な需要を取り込もうと躍起だった。
翻って足元のインバウンド消費を牽引するのは、海外の高級ブランドだ。高島屋における3月の免税売上高の商品別構成比を見ると、高級ブランドを含む「特選」カテゴリーが7割を超え、化粧品などの「婦人雑貨」は1割程度にとどまる。特選が3割、婦人雑貨が5割だったコロナ禍前の2019年3月とは、売れ筋の商品比率の順番が逆転している。
こうした傾向は百貨店大手各社で共通で、ある関係者は「円安の進行によって、高額品であるほど日本での買い物が相対的に割安になっている。一方、化粧品の落ち込みは中国人客が戻ってきていない影響が大きい」と分析する。
高単価のブランド商品が売れている結果、外国人客1人当たりの平均購入金額は大幅に上昇している。高島屋新宿店では3月の平均購入金額は2019年3月比で40%以上増加した。同店免税カウンターでの手続き件数は同月比40%減と外国人客数自体はコロナ禍前に程遠いが、客単価の大幅増がそれを補っている形だ。
今後の焦点は、最大の「お得意先」ともいえる中国本土からの訪日客が本格回復するタイミングがいつごろになるかだ。
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