朝ドラ「らんまん」早々に不評の声が飛び出すワケ あえて“地味"で“差別"の物語が選ばれた背景

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今後、視聴者の共感を集めそうなこととして1つ挙げておきたいのが、万太郎のオタク気質。ここまでの性格やこの先の展開を踏まえると、「好きなものがなかなか理解してもらえない」「『わがまま』と言われてしまう」などのシーンが想定されますが、そこで万太郎はどんな姿を見せるのか。

おそらく万太郎は好きな植物を「好き」と言い切り、目を輝かせて追い求めていくのでしょう。愛嬌たっぷりの神木さんがそんな姿を演じることで「地味」な印象が減るほか、個人の趣味嗜好をオープンにしやすくなった現在の世にフィットするのではないでしょうか。

そもそも「地味」という声が上がったのは、同じ3日にBSプレミアムでの再放送が始まった「あまちゃん」の影響も少なからずありそうです。こちらは笑いをふんだんに盛り込んだ底抜けに明るい作品であり、再放送でもツイッターのトレンドワード入りを連発。同じように毎朝放送されて比較されやすいうえに、まだ「らんまん」にはそのチャンスが少なかったことは不運でした。

植物監修にも「NHKの本気」

多くのネットメディアが「近年の朝ドラで最も視聴率が低い」ことを報じているほか、ネット上に「つまらんまん」という批判的なダジャレが書かれるなど、厳しいスタートとなってしまったことは間違いないでしょう。

もちろん、「やっぱり実在した人物の話は安心して楽しめる」「こういう落ち着いた感じの朝ドラもひさびさでいい」「たくましい女性主人公の朝ドラが多かったけど男性主人公の物語も面白い」などのポジティブな声も多く、何よりまだ始まったばかり。ここまで書いてきたようにネガティブな声の理由となっていた「差別」「地味」も、作り手の意図あってのものだけに、継続視聴を迷っている人は、もう少し長い目で見続けていいのかもしれません。

NHKは第3週から本格的に登場する神木隆之介さんへの期待感を高めるべく、14日深夜にこれまでの2週分を再放送したほか、15日深夜にも神木さんの主演作「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」(NHK)も放送。さらに16日にも「ダーウィンが来た!」(NHK)で「ようこそ!牧野富太郎の植物らんまんワールド」、「趣味の園芸」で「牧野富太郎 植物への愛」(NHK Eテレ)を放送するなど、「らんまん」を全力で盛り上げていこうという姿勢がうかがえます。

「日本の植物学の父」と言われる牧野富太郎さんがモデルの作品であるため、植物の監修も徹底的に行っているようですし、「本気のNHK」という点でも、どんな作品に仕上げてくれるのか楽しみです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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