朝ドラ「らんまん」早々に不評の声が飛び出すワケ あえて“地味"で“差別"の物語が選ばれた背景

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時代が明治に移り、9歳になった万太郎は学問所「名教館」に通いはじめますが、待っていたのは武家の子弟によるいじめ。病弱だった万太郎が「剣術の稽古」と称したいじめを回避するのは難しく、授業から逃げ出してしまうという悲しいシーンがありました。さらに翌々日の放送で万太郎は植物に関する書物への興味から学問に目覚めたものの、万太郎の祖母で本家のタキ(松坂慶子)が無理やり「名教館」をやめさせてしまうシーンもあったのです。

万太郎が母の好きな花を知り、絵に描いたことから植物に興味を持ちはじめた一方、姉の綾が思いを寄せていたのは家業の酒造り。しかし、「酒蔵に女性が入ると酒が腐ってしまう」という言い伝えに阻まれてしまいました。

これら以外でも、タキが分家の人々を厳しく叱りつける。幼い万太郎を当主に据えて使用人たちに従わせる。タキが番頭の息子・竹雄に万太郎のお目付役を命じる。女子や使用人の子は学ぶ機会すら与えられないなど、本家と分家、武士と商人、男子と女子、雇い主と使用人などの差別的なシーンが次々に映され、そのたびにネット上には「つらい」「重い」などの声が上がっていました。

個人の尊重が叫ばれる今だからこそ

2010年代後半あたりから、毎朝放送される朝ドラには、「『つらい』『重い』気持ちを引きずりたくない」という視聴者の声が上がりやすいムードが生まれていました。「らんまん」のように序盤から登場人物だけでなく視聴者にも忍耐を強いるようなシーンが続くと、多少なりとも不満の声が上がりはじめるのは当然かもしれません。

実際ここまでの物語では、幼い万太郎、綾、竹雄は「やられっ放し」で、使用人や分家の人々も言いなりになるようなシーンの連続。また、それをフォローするような閉塞感を破る兆しやスカッとするようなシーンが少なかったことも、ストレスを感じた視聴者がいた理由の1つでしょう。

しかし、主人公の病弱も、両親の早逝も、モデルとなった牧野富太郎さんの人生を忠実に再現したものであり、差別も時代背景によるところが多くを占めています。また、差別に関しては、個人の尊重が叫ばれ、ジェンダーレスという言葉が浸透しつつある今、これを正面から描くことが「らんまん」における重要なテーマの1つ。この先の物語で、「当時の人々はどのように差別を覆していったのか」「現在の社会にも差別的なことは残っていないか」などを考えさせてくれるようなシーンが見られるでしょう。

その意味で「らんまん」は、「日本にもそんな時代があった」というひと言で片付け、「『つらい』『重い』から見ていられない」と視聴をやめるには惜しい作品のように見えます。特に個人の尊重や差別されることに対して敏感な若い世代の人々に見てもらいたい作品と言えるのかもしれません。

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