佐治信忠・サントリーホールディングス社長--自粛モードを続けても日本経済は活性化しない
ビールについては過去、うまくないから売れなかったのだ。その点、「ザ・プレミアム・モルツ」は、絶対売れると確信していた。社内からは、デフレ時代に価格の高いビールなど売れないと反対の声が多かったが、市場の批評家からは好評だったため、トップ判断で断行した。現在シェアは7年間伸び続けている。
そういう意味では、人の言うことばかり聞かずに、トップが独断でやり抜くことも必要。単なる思い込みでわからんへ理屈をこねていては成功しない。
──佐治社長自ら、現場主義を重要視しています。
市場分析の数字だけでは顧客が何を求めているのかはわからない。現場で顧客の動向を自分で見て、顧客が求めているものは何かがわかるように勘を磨くことが大事。ときどき缶のゴミ箱をのぞいて、自社製品がどのぐらいあるかもチェックする。
--キリンホールディングス(以下、キリンHD)との経営統合は破談となりましたが、今は国内企業との経営統合は念頭にありませんか。
そんなことはないが、今は経営統合よりも経営効率を上げないといけない。海外の同業他社と比べても営業利益率が低い。
2ケタが当たり前の海外企業に対し、当社も含めて国内勢は1ケタ。当社は国内外全体で6%台だ。これまで日本は、あまり利益を上げることを目標にしてこなかったが、儲けることは資本主義の世界では当然のこと。少し考え方を変えていかないといけないだろう。
合併などの経営統合は、余剰人員が出ることを考えるとセーフティネットとか新しい産業が育たないと、難しい面もある。強者の論理ではダメ。経営統合は必要だが、タイミングとやり方を考えないといけない。