佐治信忠・サントリーホールディングス社長--自粛モードを続けても日本経済は活性化しない
──政府への要望はありますか。
思うように製品が造れない状況には困っている。計画停電でいったん電気が止まると、システム全体が稼働しにくくなるケースは多い。停電も毎日時間帯を変えるのではなく、今週はこの地域のこの時間帯というように、実施の仕方にも配慮する必要がある。もっと産業界と相談しながら知恵を集め、柔軟に決めてほしい。業界が困ることは日本経済にとってもマイナスになる。
政府には将来の絵図も早く示してほしい。この先どうなるのか、必要な情報をもっと公開すべき。また、情報の出し方が一方的に感じられる。伝える相手の事情を考え、希望が持てるような情報を送るべきだ。
──日本経済が急速に悪化する懸念も聞かれます。
自粛モードをこのまま続けていても、経済は活性化しない。被害のなかった地域から、生活を通常に戻すことが大事。自粛が過度になりすぎないよう、政府がメッセージを出さないと、経済がどんどん縮小してしまう。とにかく自粛すべき、との姿勢には、すごく違和感を持つ。
おカネを使える人は、おカネを使っていかないとダメだ。1929年の大恐慌時に高橋是清が、「カネを使ってもらわないと日本にとって困る」と語ったが、こんなときこそ、キャッシュフローが大切だと思う。
やってみなはれの精神でウイスキーは復権した
──国内酒類市場が縮小する中、ヒット商品が生まれていますね。
ウイスキーにおけるハイボールのヒットは、粘り強く続けてきた一つの成果だ。25年間ずっとウイスキー市場が縮小する中、一時は別の分野に手を出して体質改善をしていた。でも、ウイスキーの復権はあきらめずに、しつこく「やってみなはれ」の精神でハイボールを5年続けた。最後にたどり着いたのがジョッキ型での販売。成功したのは若手社員の知恵と努力の結果といえる。