「24年間の緩和」を後始末する植田日銀の呪縛 将来を約束し効果を前借りする金融政策の末路

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ゼロ金利解除の際には約束を守るべく反対票を投じた植田氏だが、総裁就任会見では、政策について考えを問われるたびに「現状の(経済・物価・金融)情勢では」と繰り返し、政策修正や出口の可能性を否定はしなかった。目の前の情勢への対応を優先する考えであるようにも読み取れる。

とはいえ、日銀が日本の国債の半分を抱え、名目GDP(国内総生産)を超える670兆円のマネタリーベースを世の中に供給している現実がある。積み重なった約束の呪縛は、言葉だけの約束だった時間軸政策とは比べものにならない。

就任会見翌日にワシントンへ発った植田総裁は、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議後の会見で、「(インフレ率が)2%を上回って大きな問題を引き起こすリスクと、2%を下回って物価目標の達成が遠のくことによるコストを比較した場合、後者の問題に焦点をあてた金融政策を行うのが適切」と述べたと報じられた。

インフレ加速に対して後手に回ったとしても、約束通り緩和を続ける姿勢がうかがえる。まだ、約束を破る準備もできていなければ、破るタイミングでもないのだ。

24年間の総括検証

目下、焦点となるのは新体制後、初めての金融政策決定会合(4月27~28日)で何らかの政策修正が行われるか、あるいはその方向性が示されるかどうか。2016年9月、総括的検証をふまえてYCCが導入されたように、大規模緩和の点検・検証は政策修正を示唆するとの見方がある。

就任会見でその必要性を問われ、植田総裁は「強力な緩和はある意味では二十何年間続いているので全体を総合的に評価して、今後どう歩むべきかという観点からの点検や検証があってもいい」と答えた。検証の対象を異次元緩和の10年間よりはるかに長いスパンと捉えている。

24年前に自身が踏み入った政策の、成れの果てを後始末する5年間が幕を開けた。

黒崎 亜弓 東洋経済 記者

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くろさき あゆみ / Ayumi Kurosaki

特に関心のあるテーマは分配と再分配、貨幣、経済史。趣味は鉄道の旅、本屋や図書館にゆくこと。1978年生まれ。共同通信記者(福岡・佐賀・徳島)、『週刊エコノミスト』編集者、フリーランスを経て2023年に現職。静岡のお茶屋の娘なのに最近はコーヒーばかり。

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