「24年間の緩和」を後始末する植田日銀の呪縛 将来を約束し効果を前借りする金融政策の末路

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就任会見に臨んだ日銀の植田和男総裁(中央)、氷見野良三副総裁(左)、内田眞一副総裁(右)
2023年4月10日、就任会見に臨んだ日銀の植田和男総裁(中央)、氷見野良三副総裁(左)、内田眞一副総裁(右)(撮影:黒崎亜弓)

新体制はそろりと滑り出した。4月10日、日本銀行の植田和男総裁が副総裁2人と就任会見に臨んだ。

「前体制からの大規模緩和を現状では継続する」など“安全運転”の色濃い発言を受けて、金融市場では「すぐに政策修正に踏み切ることはない」「(金融緩和に前向きな)ハト派」との見方が広がった。

ただ、植田氏自身の政策スタンスとして読み取るのは早計かもしれない。なぜなら、これまでの金融政策が、日銀自身の将来の行動を約束することで期待にはたらきかけ、政策効果を出そうとするものだからだ。体制が変わったからといって、約束をいきなり破るわけにはいかない。そのため、“安全運転”色の強い発言に終始したと推察できる。

将来の緩和効果を前借り

「将来を約束で縛る」政策の原点は、経済学者である植田総裁自身がかつて日銀審議委員として理論構築を担った「時間軸政策」にある。

1999年4月、日銀は「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまでゼロ金利政策を継続する」と表明した。金融緩和で景気を刺激しようにも、政策金利がほぼゼロに達すると、それ以下には下げられない。金利ゼロの銀行券への需要が無限に膨らんでしまい、短期金利を下げることで景気を刺激する金融緩和はその効果を失う。

この「流動性の罠」に陥りながら、それでも緩和効果を出すためのアイデアが時間軸政策だった。

時間軸政策とは、将来の緩和効果の前借りである。将来インフレ率が上がり、通常であれば金利を上げる局面となってもゼロ金利を続けると約束することで、将来の短期金利の予想、すなわち現在の長期金利を引き下げようとするものだ。

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