「ひとり親家庭はずるい」PTA活動で生まれる分断 昭和から進化ない「ナゾ役職」や強制参加の憂鬱
一方、PTA活動は「仕事と言えば融通がきくため、楽ではあった」。役員は会長・副会長・会計の3役のみ。役職につかずに小学校生活を乗り切る保護者もいる。鈴木さんにも3人の子どもがいるが、役員を経験したのは一度きりだ。
慣例で、PTAと子ども会の会長は男性、PTAの副会長と会計は女性と決められていたが、子ども会はどちらでもよいとされていた。ところが、性別を決めていることから、ひとり親家庭に「ずるい」という声があがることもあった。母子家庭の場合はPTA会長をする必要がないためだ。
「いろいろな事情がある人もいるとは思うのですが、『勝手に離婚したんやろ。わがままや』と陰で言う人もいました」(鈴木さん)
養育費がもらえず、仕事と育児に追われている父子家庭の人もいた。しかし、「ひとり親は理由にならん」と子ども会の会長にさせられてしまったという。「『みんな忙しい』ことを理由に、個々の事情は聞いてもらえない風潮があった」と鈴木さんは振り返る。
父親代表はないのに「母親代表」はあり
LINEでは、性別の規定を撤廃したという役員経験者からも体験談が寄せられた。改革に踏み切ったのは、3人の子どもの父親で、中部地方で自営業をしている藤田さん(仮名・40代男性)。コロナ禍の2022年、地域の人に小学校のPTA役員を依頼され、引き受けた。
役員に選ばれるのは、公務員や自営業がほとんどで、在宅勤務の会社員もいる。「任期は2年。融通がきく人が声をかけられやすい」。月に1回の集まりは、休みである平日に開催されるため、支障なく活動を続けているという。
性別によって役割が違うことは、役員になってから初めて知った。規約に性別のことは書かれていないものの、会長と副会長は男性という慣例がある。「父親代表」はない一方で、女性にしかできない「母親代表」という役職があった。
疑問を感じた藤田さんは、名称を変え、性別を問わずに誰でもできるようにしようと提案した。賛成する声があがったが、学校側が提案したのは「家庭教育委員」だった。
「外国にルーツを持つ人、ひとり親など、多様な家族の子どもたちがいますし、教育は家庭だけではなく、地域社会でおこなうことが推奨されています。『家庭』ということばを使うことに違和感を抱きましたし、『家庭』が『教育』をおこなうという前時代的な思想を彷彿させるとも思いました」(藤田さん)
藤田さんは反対したが、学校側に「行政の方針」といわれ、名称が決まった。男女の枠組みをなくすことには成功したものの、まだまだ改善すべきことはあると語る。
多様な家族と働き方がある令和の時代に、PTAのあり方は昭和のままのようにみえる。それでも藤田さんのように、小さくても一石を投じれば、変わる可能性はあるのかもしれない。
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