3月に欧米で起きた金融不安とは何だったのか クレジットアナリストの大橋英敏氏に聞く

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――FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利上げが急激に進んだ中、破綻したSVBなどは長期有価証券の保有割合の多さが問題として指摘されました。

急激な利上げによって結果的に今回の事態が起きた面はある。ただ利上げそのものが必ず一連の銀行破綻を招くというものではない。市場金利が上がる中、今年初めからすでに預金は流出超過であり、預金金利引き上げの議論が盛んになっていた。

預金金利を上げる局面では、長期償還の有価証券をいつまでも保有している場合ではない。ましてやコロナ禍でバランスシートが3倍に膨れ上がったのも一時的なものだと理解して、再び預金が出ていくことを考慮に入れなければいけないはずだ。それらの多くを長期有価証券に投資した判断自体に疑問が残る。実際に破綻や経営不安が出た銀行は、長期有価証券の保有が多い、特定業種からの預金や取引が集中しているなどの類似点を持っている。

危機は誰も気づいていなかったから危機となる。その点では、短期的な大規模預金取り付けがネットバンキングなど技術の進化やSNSを通じた噂の拡散で発生する可能性に気づけていなかった。FRBも資金供給を行おうとしたが間に合わず、預金取り付けに対応できずに破綻を招いてしまった。

中堅銀行でもシステミックリスクは起きた

――アメリカの金融不安の教訓としては、流動性を担保する対応ができていなかったということでしょうか。

まず破綻の直接要因は資金繰りの面にあった。FRBからの借り入れにかかる時間を今以上に短縮する、担保の移管を素早く行えるようにするなどタイムフレームを変える必要はある。

もう1つはG-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)と違って、中堅銀行以下には、どれだけ短期的に資金化可能な資産を保有しているかを指すLCR(流動性カバレッジ比率)などのG-SIBs向けの規制の一部がない。共和党政権下で銀行規制が厳しすぎると中堅銀行以下の規制を緩和し、結果として流動性の管理がおざなりになっていた。

中堅銀行でも破綻によってシステミックリスクが生じるのなら、もっと規制を厳しくすべきという話には当然なるだろう。アメリカは大統領選も控えており、実際に破綻が起きたので、規制厳格化の方向になっていくはずだ。

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