スズキ「スペーシア」軽ハイトワゴン苦戦の真実 電動化と半導体などの部品供給難に揺れる葛藤

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スペーシア ベースの室内
スペーシア ベースの室内。商用車としてはもちろん、アウトドアなどでの遊びでも使いやすい空間となっている(写真:スズキ)

ただ、スペーシア ベースは商用車の枠組みなので、乗用車販売台数の統計に加えられていない。もし、今年2月のスペーシアとしての販売台数に、スペーシア ベースを加えるなら、ムーヴを超えて3位となり、2位のタントに1500台と迫ることになる。

同じことはホンダの「N-VAN」にもいえるかもしれない。今年2月の2984台をN-BOXに追加するなら、2万台を超え、2位のタントに1万台近い差をつけることになる。いずれにしてもホンダの強さが明らかだ。

一方、ダイハツには、商用のボンネットバンの設定がない。ただし、キャブオーバーバンとして「ハイゼットカーゴ」がある。しかし、ハイゼットカーゴは、宅配便などで使われる姿を見るように、あくまで配送用という位置づけの軽商用車だ。同じ4ナンバーの「アトレー」も2021年に刷新されているが、ハイゼットカーゴほど新車販売の統計にのる明確な数値が今はない。

商用の枠にとらわれないボンネットバンの魅力

のN-VAN
スペーシア ベース同様、商用利用だけではなく、乗用車としても好評を得ているホンダのN-VAN(写真:本田技研工業)

スペーシア ベースやN-VANは、基本的には商用車枠ではある。だが、仕事用としてだけでなく、個人が余暇で使ううえで、いろいろな道具を運びやすく、それでいて運転しても楽しさを味わえる雰囲気を持ったボンネットバンだ。スズキはかつて、初代「アルト」を売り出すとき、ボンネットバンとすることにより格安の車両価格で身近な軽という魅力を発信した。乗用に限らず、ボンネットバンも軽の愛好家に評価される実績を残している。そのアルトに競合するように、当時はほかのメーカーでもボンネットバンという価値を改めて見直した時代があった。

ホンダの新型軽商用EV
ホンダが2024年春に発売を予定しているN-VANをベースにした新型軽商用EV。写真はプロトタイプ(写真:本田技研工業)

今後、軽の電気自動車(EV)化やハイブリッド化がさらに進めば、規格上は商用車の扱いになっても、クルマとしての魅力は、加速も静粛性も、そして乗り心地も、乗用車と変わらない軽商用EVがひとつの時代をつくるかもしれない。スズキもホンダも軽商用EVの導入を表明している。

自動車部品の供給不足は、たとえばドアミラーの電動化ができないとか、ラジオを装着できないなどの影響にもおよんでいるという。そうしたなか、スズキは軽自動車メーカーのなかでも電動化を先んじて進めてきた経緯がある。

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