埼玉・小川町メガソーラー、事業化困難で大誤算 経産省が大量の認定失効に踏み切った背景

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1月29日の説明会終了後、住民に対応した加藤代表によると、東京電力側に着工申し込み文書を提出し、受領されたという。またこれとは別に、国の環境アセス制度に沿って手続きを進めていることを経済産業省に確認してもらう段取りも踏んでおり、「認定失効は回避された」と判断したようだ。

環境アセス手続き当初の計画を基にした事業予定地。太陽光パネルが貼られるところが黄色く塗られている(小川町里山クラブ“You-You”提供)

4月3日に公表された認定失効情報は、資源エネルギー庁のホームページの「失効情報紹介」コーナーに知りたいメガソーラーの設備IDを入力しすると、認定が失効している場合には「〇年〇月〇日以降、認定が無効です」と表示される仕組み。

「さいたま小川町メガソーラー」の設備IDを入力すると、4月1日に認定が失効していることがわかった。小川エナジーの「回避できた」という理解は「誤解」だったといえる。

電力会社に系統への着工申し込みを行う際には、県から林地開発許可を得ていることなどが要件になっている。着工申込書にそれを証明する文書を添付する必要はない。しかし申込書には、要件をクリアしていないことが判明した場合、「失効となる可能性がある」と明記されてもいる。

小川エナジーは、埼玉県からの林地開発許可をまだ受けていない。環境アセス手続きを早く終え、林地開発許可を得ていれば、認定失効を免れることができただろう。

国が認定失効制度を新設し、大量処分に踏み切った背景

認定失効制度は2020年の法改正で盛り込まれ、2022年度に本格施行された。FIT制度では、認定を受けた時点で設定される調達価格で20年間にわたり、電力会社(送配電事業者)に売電できる。小川エナジーが認定を受けたのは2017年3月で、設定された調達価格(電力会社による買い取り価格)は1kWh(キロ・ワット・時)当たり24円。

太陽光発電の場合、調達価格は大きく下がってきた。2022年度は1kWh当たり10円を切っている。いったん認定を受ければ、年数がたってからの稼働でも、認定時の高い値段で電気を売れるが、この仕組みは国民の賦課金によって支えられている。2022年度の賦課金は再生可能エネルギー全体で1kWh当たり3.45円。平均的な使用量の家庭では年1万6560円だった。

0.22円だったFIT導入時から約16倍にも膨らんだ賦課金。当然批判は強く、国民負担の増大抑制が喫緊の課題となった。経済産業省は「高い調達価格の権利を保持したまま運転を開始しない案件が大量に滞留する」(資源エネルギー庁)事態に、メスを入れる必要に迫られた。発電事業者の中からも「無理筋な未稼働案件が消えてくれれば、容量が限られている電力会社の送配電網を優良な事業で使える」との声が出ていた。

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