「息子が血を吐いた」想像を超える詐欺の最新手口 狙われる高齢者、食い尽くされる親のカネ

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台所に立つ田中さん
高齢者のお金をあの手この手で吸い取ろうとする”だましのプロがいる。彼らの本当の顔に迫る(デザイン:小林由依、中村方香、松田理絵)
「オレオレ詐欺」をはじめとする特殊詐欺の被害に遭うのは、大半が高齢者だ。なぜ高齢者が狙われるのか。4月3日発売の『週刊東洋経済』の特集「狙われる高齢者 喰い尽くされる親のカネ」では、高齢者が詐欺や悪徳商法に狙われる社会的構造と、加害者たちの実像に迫った。親の資産防衛マニュアルも収録。家族を被害から守るための完全保存版だ。

「何を言ってんだい。私がオレオレ詐欺なんかにだまされるわけないでしょう」

愛知県で一人暮らしをする田中芳枝さん(仮名、88)は、1年前に息子へ言い放った自身の言葉を、苦々しく思い出している。

週刊東洋経済 2023年4/8号[雑誌](狙われる高齢者)
4月3日発売の『週刊東洋経済 2023年4/8号』の1特集は「狙われる高齢者 喰い尽くされる親のカネ」。アマゾンでの購入はこちら

近所で暮らす息子が「お母さん、自分はだまされないと思っている人ほどだまされるんだからね」と指摘したのに対し言い返したのだ。

自信はあった。詐欺を見抜いた経験があったからだ。電話口で「俺だよ」と口にした男に、「毅志なの?」と聞くと「毅志だよ」。そこで「毅志の声じゃない。あなたは誰?」と突いた。「風邪をひいていて」と慌てた男を、田中さんは「風邪をひいたら病院に行きなさい」と一喝し、電話を切った。

この体験が慢心につながっていたのかもしれないと、今は思う。

病院から突然の電話

自宅の電話が鳴ったのは昨年の、残暑が続く9月初旬、日が傾き始めた午後4時ごろのことだった。

「名大病院の耳鼻咽喉科の青木と申します。息子さんが喉から血を出して運ばれてきました。お母様に確認したいことがあって。親族に同じ経験をされた方はおられますか。遺伝的なものか、突発的なものなのか確認したいのです」

オレオレ詐欺で150万円をだまし取られた88歳の田中さん。「オレオレ詐欺なんかに自分がだまされるわけがない」と信じ込んでいた(写真:記者撮影)

ひどく驚いた田中さんは、ひと呼吸置き、親族の病歴を頭に浮かべた。が、思い当たらなかった。

田中「親族にはいないと思います」

青木「そうですか。じゃあがん系統ではないなあ。わかりました」

田中「息子は今どういう状態なんですか。すぐ名大に行きます」

青木「意識はあるから大丈夫ですよ。ただ、声はしゃがれています。(電話)代わります?」

田中「はい、代わってください」

息子「お母さん、心配かけてごめんね。何とか声は出るけど痛いんだ。終わったら、そっち寄るから」

電話は切れたが、気は動転していた。5分後、再び電話が鳴る。

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