「息子が血を吐いた」想像を超える詐欺の最新手口 狙われる高齢者、食い尽くされる親のカネ

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総務省統計局の家計調査報告によると、純貯蓄額(貯蓄現在高から負債現在高を差し引いた額)は60代が最も多く、次に多いのが70代だ。一方で負債を多く抱えているのが40歳未満である。主なものは住宅ローンだが、奨学金なども含まれる。

特殊詐欺の実態に詳しい、社団法人日本防犯学校学長の梅本正行氏は「特殊詐欺に関わってしまった若者は、大きな借金を抱えているケースが多い」と指摘する。

「2000年以降、格差が進んだ社会の中で、大学に通うために多額の奨学金を借りなければならない家庭が増えた。また、クレジットカードが普及したことで、若者でも大きな借金ができる社会ができ上がった。会社に入ってまじめに働いても低賃金が続き、リストラも簡単にされる。そんな憂き目に遭っている若者たちが『日給5万円』の闇バイト募集を見つけ、飛びついてしまっている」

近年は暴力団や半グレが介在

特殊詐欺グループのあり方も変遷した。当初は、バックに組織のついていない独立系グループが多かったが、近年は暴力団や半グレ(準暴力団)が介在し、ケツ持ち(用心棒)という形で詐欺の収益を吸い上げるケースが目立つ。

独立系グループを乗っ取ってきた現役暴力団組員は「バックがいない組織を次々に喰った」と語る。

その手口はまず、手下を闇バイトに応募させる。「金が取れました」とうその報告をさせ、迎えに来た人間を捕獲するのだという。

「そいつに誰がトップか吐かせ、わかったらトップを脅す。『警察に行くか? それとも俺の言うことを聞くか?』と詰め、ハコ(グループ)ごと乗っ取る」

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