WBCで注目される今、考えたい「球児のケガ・故障」 「成長期の子と野球の付き合い方」専門家が解説
また、高円宮賜杯第39回全日本学童軟式野球大会(マクドナルド・トーナメント)で行った約800人の肩肘検診では、小学校5、6年生の投手兼捕手の80%、投手の79%、捕手の75%に肘障害が生じていたことがわかった。
そもそも全国大会に出る強豪校には、練習が厳しいために肘障害を持つ子が多いのだが、問題なのは「エースが投げれば勝てることが多い」ため、1人の子に連投させてしまうことが多い点だ。本来は、1人に負荷が集中しないよう気をつける必要がある。
実は小中学生ぐらいだと骨はまだ完全に成長しておらず、成長線(骨端線)が残っている。軟骨が多いため柔らかく、負荷に弱い。そんな時期に体を酷使するのは、非常にリスクが高い行為なのだという。
大谷選手は無理をしなかった
「骨端線は、だいたい中学3年生から高校1年生くらいに閉鎖して大人の骨となります。ですが、その閉鎖の時期には個人差がある。大谷選手は高校3年生になっても骨端線が残っていたので無理をしなかった、という話を聞いたことがあります。大谷選手に限らず、身長がまだ伸びているという選手は、骨端線が残っている可能性があるんです」(古島さん)
高校生についても、古島さんが甲子園常連校の新入部員60人を対象に、肘の障害歴を数年にわたって追跡調査した結果、高校入学前(小中学生のとき)に肘を痛めたことのある選手は39人(65%)いた。その後1年以内に肘の痛みを感じた選手は20人いたが、そのなかで肘痛が再発したのは18人だった。
肘障害の再発率は小中学生で痛めた場合は46%(18/39)、高校入学までに肘障害がなければ9.5%(2/21)とリスク比は5倍ほど違う。やはり、小中学生のうちに肘障害を起こさないことが大切であることがわかる。
「未発達な小中学生の頃に過度な練習をして肘を痛めると、高校以降も引きずることが多いんです。反対に、小中学校のときに故障することなく過ごせた場合は、その後に手術が必要になるほどの障害を負うリスクがかなり減ります。手術が必要になってしまう高校生や大学生は、ほぼ小中学生での肘の故障歴があります」(古島さん)
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