「1円スマホ」にメス?変わらぬ携帯販売の異常体質 「安売り依存」のキャリアは当局に規制を要求

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総務省の資料によると、かつてレンタル制が基本だった携帯端末は、1994年に売り切り制へと転換。その後は端末を低額または無料でユーザーへ提供し、通信料金で回収する仕組みが取られてきた。

転機が訪れたのは2007年。総務省の研究会で、通信と端末を分離したプランを広げていく考え方が示された。それを受けたキャリアは端末価格と通信料金を切り離したプランの導入を進めたものの、端末の安売りに慣れ切っていた消費者の買い控えが発生。結局キャリアや代理店はその後、「抜け穴」を探すことに躍起となっていった。

以降、ユーザーへの高額キャッシュバックや、端末の大幅値引きなどが横行するたびに総務省は新たな規制をかけて対抗し、事業者がその裏をかくという悪循環に陥った。

公取委も問題視した1円スマホなどの格安端末がはびこる現状も、規制の抜け穴が突かれた結果だ。というのも、実は2019年10月に行われた電気通信事業法の改正により、端末割引は2万2000円(税込)までとする規制が法制化されていたのだ。

ただし、規制の対象は回線とセットで売る端末に限られる。2万2000円の割引を適用したうえで、端末単体をキャリアや代理店が独自に割り引いて販売すれば、法律に抵触しないかたちで実質的な大幅値引きが可能となる。

端末のみを大幅割引して販売するメリットはキャリアや代理店側にない。そのため実際には、「端末単体だと在庫がないが、MNPなら用意できる」などの営業文句で消費者をMNPへ誘導しているケースが大半だ。こうしたカラクリにより、1円スマホなどの値引き合戦が足元で繰り広げられているわけだ。

安売り横行の背景に「MNPノルマ」

そもそも、総務省が通信と端末の分離にこだわる理由は何か。

総務省総合通信基盤局料金サービス課の担当者は、「端末価格を通信料から補填する形となって内訳が不透明化すれば、通信料が高止まりしかねない。また、頻繁に端末を買い替えるユーザーばかりが得をする構図となるため、公平性の原則にも反する」と指摘する。

競争政策の観点でも問題がある。資金力のある事業者が端末の大幅値引きで他社を駆逐しかねず、サービス本位での競争が行われない懸念があるためだ。

公取委は2月に公表した調査報告書で、スマホ廉売が起きている一因として、キャリアによる代理店の評価制度が影響していると指摘した。実際、公取委が代理店に実施した調査では、極端な廉価販売を行った理由として「MNP獲得指標における目標値を達成するため」との回答が多く上がった。

楽天モバイルを除くNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社は、企業ごとに比重の大きさの濃淡はあるものの、各代理店の評価指標にMNPの項目を設けている。MNPの獲得件数が少なければ、インセンティブ収入が下がったり、最悪の場合は店舗閉鎖に追い込まれたりしかねない。中でも店舗削減を進めるドコモのショップでは、こうした動きがとくに顕著だ。

大手キャリアがMNP獲得に執着する背景には、モバイル市場の流動性の高まりがある。

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