今の金融不安はリーマンショックと何が違うのか シリコンバレー銀破綻、クレディ・スイス危機の本質

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ただ、当時と大きく異なるのはSNSやフィンテックの発達で、危機が瞬間的に世界中に拡散してしまうことだ。まさにDX時代の金融不安であるということだ。原因となった要因をまとめてみると次のようになる。

1.FRBによる急激な金利引き上げによって、銀行が投資していた債券価格が急落したこと
2.金融不安が「SNS」の時代を迎えて、瞬時に世界中に拡散される時代になったこと
3.コロナ危機によって急成長した企業が、本来投資すべきではない資産に投資していたこと
4.一部にリセッション懸念など、金融不安に対する警戒感が蔓延していたこと

問題はこれからどうなるかだが、FRBによる金利引き上げ局面は今後も続きそうだ。インフレ懸念はいまだにおさまっていないために、もうしばらくは金利引き上げ、債券価格下落による金融機関の損失計上が続きそうだ。経営危機に直面する金融機関は、今後も出てくる可能性は極めて高い。

もっとも、今回のSVBやシグネチャー銀行の対応については、異例のスピードが目立った。預金保険を超える預金も含めて全額保護すると表明した財務省やFDICの対応は、逆に今回の金融不安騒動が深刻なものであることを示したともいえる。さらに、すべての金融機関を助けてしまうとモラルハザードの問題も出てくる。

財務省高官が「金融機関は救済されないが、預金者は保護される」「FDICの預金保険機構には1000億ドル(約130兆円)あまりの十二分な資金がある」と表明している――と、ブルームバーグ(「米財務省高官、SVBと同様の問題抱える金融機関は複数ある」2023年3月13日配信)は報道している。

未来の危機は未知数?

問題は今後、リーマンショック時のように「大きすぎて潰せない銀行」が複数出てきたようなケースだが、そのときには金融システムは一気に不安定になる。預金保険では救済できない「ノンバンク」が経営破綻した場合の問題もある。世界中の中央銀行が緩和政策を取り続けたために、その揺り返しがこれから襲ってくる可能性がある。

世界のあちこちで銀行の取り付け騒ぎが起こり、債券市場だけではなくて株式市場も暴落するシナリオを想定しておいたほうがいいかもしれない。今回の金融不安では表面化と同時に、金価格が1トロイオンス=2000ドルを瞬間的に超えたことでも、世界中の投資家が対応していることがわかる。

日本では金利が大きく上昇していないために、債券価格も大きくは下落していない。ただ、海外の金利高=債券価格下落の影響を受ける銀行や証券会社などの金融機関が出てくる可能性は否定できない。SVBにビジネスモデルが似ている金融機関や投資グループも少なくない。

かつての銀行の取り付け騒ぎは預金者が銀行の窓口に押し寄せて危機が発覚したが、デジタル化が進んだ現在ではネットで預金の引き出しが行われる。金融不安はある日突然表面化するということだ。SNSを見た預金者が一斉にネットで預金を引き出すのが現在の金融不安といっていい。われわれは、そんな時代に生きている現実を、まずは知ることが大切なのかもしれない。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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