今の金融不安はリーマンショックと何が違うのか シリコンバレー銀破綻、クレディ・スイス危機の本質
本来、売却してはいけない債券まで損切りして売却し、3月に入ってから債券売却による損失計上を発表、同時に損失を上回る増資の計画も明らかにした。SNSでは「深刻な経営危機」と数多くの投稿者が指摘し、その投稿にあおられた預金者たちが、一斉に預金を引き出しに動いたとされる。いわゆる「取り付け騒ぎ」が起きたのだ。破綻の前日には1日だけで実に420億ドル(日本円で5兆6000億円)の預金が引き出されたと報道されている。
この取り付け騒ぎによって、SVBは9億5800万ドル(約1300億円)の現金不足に陥り経営破綻することになった。引き出された預金額は全体の24%に上るとされている。SNSも絡まったわずか2日間の取り付け騒ぎで、流動性がストップして経営破綻した世界で最初の銀行といっていいかもしれない。周知のように、その後アメリカ財務省は預金保険を上回るものも含めて、預金全額を保証するというメッセージを出して事態は収まることになる。
暗号資産関連をメインとする銀行が破綻
シリコンバレー銀行の経営破綻から2日後には、暗号資産関連企業をメインの顧客としている「シグネチャー銀行」が経営破綻している。アメリカで3番目に大きな経営破綻となったのだが、「FDIC(連邦預金保険公社)」は、シグネチャー銀行のほぼすべての預金と一部の融資債権、全40支店が、「ニューヨーク・コミュニティー・バンコープ(NYCB)」の傘下銀行である「フラッグスター銀行」に資産買収されると発表している。
シグネチャー銀行の資産規模は、1103億6000万ドル(2022年12月末)。2090億ドル(同)のSVBとは大きな隔たりがあるが、ここでも預金保険を上回る預金を含めてすべて保証するとFDICは発表している。
シグネチャー銀行が経営破綻した背景には、顧客に暗号資産関連企業が多かったために、規制当局が発した暗号資産に対する厳しいメッセージが原因ともいわれているが、管轄するニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)は、破綻の原因を暗号資産とは無関係と答えている。とはいえ、シグネチャー銀行の取締役を務める元下院議員の、なぜ同行が閉鎖され、買収されたのか「不可解」というコメントをロイターなどが伝えている。
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