火付け役が語る「お菓子缶」空前ブームのなぜ 書籍や女性誌などで「人気お菓子缶」の特集も

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最近はまた、例えばロゴや商品名などを浮き彫りにするエンボス加工の缶も高級感などがあることから人気だという。このほか、シーズンやイベントなどによって缶の絵柄が変わる菓子メーカーがあったり、企業がイベントなどで作るケースもある。バラエティの豊かさに加え、こうした進化や希少性も収集マニア心をくすぐるのかもしれない。

実はエコ素材だった缶

金方堂松本工業の強みは、意匠性にあるという。松本社長によると、底の材料を巻き込んで胴と底を密着させる缶が一般的だが、巻いたところが側面のデザインを邪魔しまう。対して同社では、平たく伸ばす組み上げ缶の技術を開発し、側面も美しくデザインできるという。

写真上が一般的な缶。写真下はデザインを損なわないように、縁を平たく伸ばしている(写真:筆者撮影)

鉄はリサイクルシステムが確立しているため、缶を廃棄してもリサイクルできる。スチール缶リサイクル協会の調査で、2021年度のスチール缶のリサイクル率は93.1%に上る。アルミ缶、段ボールに次ぐ3番目で、紙容器・紙パックが半分に満たないことに比べると、かなり環境に優しい素材といえる。「最終的には錆びて土に還ります」と福室常務。

クッキーやフィナンシェなどの焼き菓子は、10年余りの間、静かに流行が広がっているスイーツでもある。こうしたお菓子自体の人気も、お菓子缶の流行に影響していると思われる。日本は、昔から贈答の文化が発達していることや、湿度の高さも、世界でまれにみるほどお菓子缶文化が充実していることに影響したのだろう。

お菓子缶好きはたくさんいるが、缶自体の魅力が高いと、デザイン違いで何個も缶を買うなど購買の拡大につながる。また、中田氏のコレクションの中には、著名なアートディレクターがデザインに関わるなど、美術的価値が高い缶もたくさんある。ポスターをコレクションする美術館があるなら、お菓子缶の美術館があってもいいかもしれない。美しく楽しいお菓子缶の世界は、これからまだまだ広がっていきそうだ。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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