火付け役が語る「お菓子缶」空前ブームのなぜ 書籍や女性誌などで「人気お菓子缶」の特集も
今はブームのため、「どこの製缶屋も忙しい」と営業統括部長の福室義昭常務は言う。同社も2024年3月期は新しい企画が前期の1.3倍弱あり、製造数も増えている。2020年、大きな顧客であるテーマパークなどがコロナ禍で軒並み休業したこともあり、受注は半減したが今は盛り返しているという。
受注が伸びているのは、小ロット生産を請け負うようになったからでもある。完全オーダーメイドの缶は今も3000個から、印刷なしのシルバーの缶なら1000個から受け付けているが、昨年から、既存の金型を使い100缶、50缶などの単位で無地の缶を受注できる体制を整えた。ポピュラーな87×140ミリの缶は、6つのデザインから選べる印刷缶もある。
松本旭央社長は、「ここ5年ほど、個人のお店さまが注文することが増えてきている」と事情を説明する。福室常務も、「2014年に九州で工場と営業所を作りましたが、中小の菓子メーカーが多くお菓子缶の文化があまりなかったことから、ロットの大きさがネックになって苦戦していました。小ロットで作れるようにしたところ、かなりお取引点数が増えました」と、補足する。
小さめの缶にぎっしり詰まった高級品が人気
昨今のお菓子缶ブームについて松本社長は、「バレンタインでクッキーが出始め、缶入りの人気が出てきたことで、お菓子缶ブームが徐々に広がった印象があります。コロナの影響もあると思います」と分析する。「昔は大きくて画面が広い缶を周囲に配る人が多かったのですが、今は小さめの缶にぎっしり詰まった高級品を手土産にする、自分用に買うという人がかなり増えています」。
中田氏の著書によると、2014年に立ち上がった大阪製缶のお菓子缶専門ブランド「お菓子のミカタ」では、50個から既成缶を注文できる。ロット数でお菓子缶利用を断念してきた店も発注できるようになり、バラエティが広がっていたところへバレンタイン事情の変化→大手の小ロット受注への参入→コロナ禍→テレビの紹介と広がってきたことが、流行を大きくしている。記事や書籍、SNSでお菓子缶の情報を発信する中田氏の存在も大きい。
流行の特徴について、松本社長は「2016年頃から、アニメ作品とのコラボ缶がすごく人気になりました。また、15年ぐらい前からバレンタインのチョコレート缶が増えたのですが、5年ぐらい前からチョコだけでなくクッキーも贈ろう、とクッキー缶も増えました」と説明する。
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