火付け役が語る「お菓子缶」空前ブームのなぜ 書籍や女性誌などで「人気お菓子缶」の特集も

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中田氏はマニア以前に、編集者・フードジャーナリストでもある。だから、仕事としても幅広くお菓子缶について取材してきた。「神戸のモロゾフさんには資料が揃っていました。ゴンチャロフさんは残念ながら、阪神・淡路大震災で被災した折に資料もなくなってしまったそうですが。東京のメリーチョコレートさんは、パッケージを含めて買う喜びを考えていらっしゃる。創業者は、モロゾフ出身なんですよ」と語る。

中田氏の『もっと素晴らしきお菓子缶の世界』によると、お菓子缶の発祥はイギリス。19世紀後半のヴィクトリア朝時代には、湿気から守るためビスケットを入れる缶があったという説がある。最初に作ったといわれるのが、のちに世界最大のビスケット工場を所有するハントリー&パーマー。運搬用だった缶を土産用に小型化し装飾して出したところ、評判になったのだという。

現在のブームのきっかけは?

一方、日本での缶の歴史は、1871(明治4)年にイワシの油漬け缶が作られたことから始まる。お菓子缶は、海苔やお茶用とともに1909(明治42)年から製造されるようになった。日本の場合は、湿度が高い気候ゆえ、密閉性の高い容器が求められる事情もあった。本格的にお菓子缶が広がっていくのは、日本が占領から解放された1952年以降。1970年代になると、中元・歳暮の贈答品が人気になり、中田氏によると「プレブーム」が始まる。

2010年頃になると、雑貨ブームの影響で雑貨屋にお菓子缶が置かれ手に入りやすくなったことから、第1次ブームに。中田氏が本格的に収集を始めたのも、この頃からだ。

現在のブームのきっかけは、製缶会社が小ロット生産を始め、お菓子缶を使う洋菓子店が増えていたことだ。そこへ、ステイホームを強いられるコロナ禍が始まり、お取り寄せが活発になったときにステキなお菓子缶が多いことに気づく人たちが増えた、と中田氏は分析する。

ではなぜ今、それほどバラエティが豊かになったのか、そして人気はどれほど高いのか。製缶メーカーで最も古く最大手でもある、東京・御徒町の金方堂松本工業を訪ねた。

同社の創業は1905年で、1909年からお菓子缶製造に乗り出しており、現在は受注の9割近くがお菓子缶だという。百貨店が誕生し、レジャーを楽しむサラリーマン家庭が増えた時代の波に乗った。戦前は薬莢などの軍事系の缶を作ることも多かったそうだ。お茶や海苔、コーヒーなどのほか、一時期はコンサートのイベントグッズ入れがはやり、最近は靴磨きセットの缶を作ることもある。

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