松竹梅の「竹」選んでいない?買い物の法則と心理 竹は「そこそこ安くて品質もある程度いい!?」

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これは、売る側が消費者の「極端回避性」を知っていれば、最も売りたい商品を買わせて利益を上げる方法を取ることが可能になることを意味する。中間の選択肢を値段のわりに質の低いものにして、利益率が最も高くなるようにすればいいのだ。

「おとり」なしなら冷静に判断できる 

もうひとつ。アメリカの行動経済学者ダン・アリエリーによる、雑誌購読の選択実験を紹介したい。 

『ミクロ・マクロの前に 今さら聞けない行動経済学の超基本』(朝日新聞出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

1回目の実験で用意したのは3つの購読プラン。「59ドルのオンライン版」「125ドルの印刷版」「125ドルのオンライン&印刷併用版」だ。この実験では、購読者の16%がオンライン版、84%が併用版を選び、印刷版のみを選んだ購読者は0%だった。明らかに劣る「印刷版のみ」という選択肢が「おとり」となって、同じ価格でオンライン版も印刷版も読める併用版が実際以上に良く見えた結果だ。

2回目の実験で、選択肢を「59ドルのオンライン版」と「125ドルのオンライン&印刷併用版」の2つだけにすると、オンライン版が68%、併用版が32%と、購読者の数は逆転。「おとり」なしで冷静にオンライン版と併用版を比べると、オンライン版のほうがかなり安くて内容はさほど変わらない、と判断した人が多かったということだ。

何かを選ぶとき、人は、選択肢の数や内容に強く影響される。上で紹介した2例の実験からも、このことは明らかだ。売る側の企業がこの「極端回避性」や「おとり効果」をうまく用いれば、消費者の選択を誘導するのは簡単。自分の意思で選んだつもりでも、売り手にコントロールされ「選ばされている」という場合があると意識しておきたい。

(構成:生活・文化編集部 上原千穂)

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