「給料が上がらない会社」はいますぐお辞めなさい 日本人の「給料安すぎ問題」を解決する秘策

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先ほどご説明したように、日本企業は内部留保を積み上げていながら、従業員の給料を上げることはしてきませんでした。

これは、多くの日本人が現状をよしとし、「給料交渉」「転職」というプレッシャーを経営者にかけてこなかったからにほかならないのです。

人口減少時代だからこそ、積極的に交渉・転職すべき

「給料交渉なんかしたところで、社長が素直に給料を上げるなんて考えられない」

そう思われる方も多いかもしれません。たしかに日本の場合、企業の99.7%が中小企業で、その多くはオーナー企業です。従業員の給料を上げて人件費を増やすということは、大半の企業の場合、オーナーの取り分を減らすのと同じことなので、そうやすやすとは上げてはくれないでしょう。

しかし、給料交渉をする人が増え、それが叶わなければ転職して他社に行くことが「当たり前」の世の中になったら、社長は給料を上げざるを得なくなります

なぜなら、日本はすでに人口減少のフェーズに入っており、人手不足が顕在化しているからです。この傾向はこれから何十年も続くことが確実視されています。つまり、働く人材はますます貴重になり、あなたの交渉力は上がる一方なのです。

そんな交渉のチャンスを逃して、あなたの貴重な労働力を安く買い叩かれているのは、きわめてもったいない。

給料について交渉することで、そして給料が上がらないならば躊躇せずに転職先を探すことで、自分に合った仕事や給料を手にする可能性が高まるということを、強くお伝えしたいと思っております。

この度、『給料の上げ方――日本人みんなで豊かになる』というタイトルの本を上梓しました。ポイントは「みんなで豊かになる」です。

給料交渉をして、それが叶わなければ転職するという行動は、あなただけが「抜け駆け」をして給料を上げる方法ではありません。あなたのような人が増えれば増えるほど、経営者へのプレッシャーは高まります。そうすれば、内部留保の一部を給料に振り向ける経営者は確実に増えていくことでしょう。

あなたの給料を上げることは、あなた自身の、仲間の、そして日本で働くみんなのためになるのです。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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