日経平均株価はこのまま下落してしまうのか? 個人投資家は金融不安時にどう動けばいいのか

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ECBの大幅利上げを受けて、はたしてアメリカのFRBは21~22日のFOMCでどう動くのか。

FRBは、すでに15日までのわずか1週間で、民間の銀行がFRBから借り入れた資金が1528億ドル(約20兆円)を超えたと発表している。この借り入れ額は、その前の1週間と比べて実に30倍以上に急増しており、リーマンショックが起きた2008年の1107億ドルを超え、過去最高を記録したと報道されている。

振り返るまでもなく、銀行が資金不足に陥っている元々の原因は、FRBによる急速な利上げという「大失策」にある。これで民間銀行の保有する債券が急落したことが大きい。「マッチポンプ」のような形になっている現状で、さらに大幅な利上げができるのだろうか。

日本株も「売り」しかないのか

一定の年齢以上の読者ならご存じのとおり、リーマンショックは突然起きたわけではない。その前の年である2007年8月9日、仏大手金融機関のBNPパリバが同行傘下のミューチュアル・ファンドの解約を凍結、パリバショックが起きたことは記憶に新しい。この時点あたりから、すでに問題が表面化していたサブプライムローン問題は、さらに深刻度を増していった。

しかし、結局リーマン・ブラザーズの破綻は、ここから約13カ月後の2008年9月15日だった。このように金融関係の不安は「終着駅」まで時間がかかることもあれば、疑惑だけで消えてしまうこともある。また、「ドイツ銀行の経営不安」などのように、10年以上前からついたり消えたりしている例もある。

したがって、「あえて逆張りで銀行株に注目する1つのタイミングは?」と聞かれれば、金融不安が表面化したときということになる。とくに三井住友フィナンシャルグループなどのメガバンクの株価はつい最近まで、一貫した右上がり状態だった。株価は下落しても、短期線である25日移動平均線が押し目のメドとなっていた。

だが、今や株価は中期線の75日移動平均線も大きく割りこみ、短期では念願の押し目が来たとも考えられる。ここは逆張りで一定額を買ってみるのも1つの手かもしれない。現時点では金融不安の先行きについては予断を許さないが、金融問題を乗り越えたときの「マネーの逆襲」は大きいからだ。

また、日経平均株価について移動平均線を物差しにして見ると、25日・75日移動平均線とも下向きになっている。かろうじて上を向いている長期の200日移動平均線も、今週以降下向きになる可能性があり、モメンタム(勢い)は極めて悪い形になるかもしれない。

ただし、筆者は日本テクニカルアナリスト協会の会員の端くれでもあるのだが、市場では頻繁に「テクニカル(の常識)破り」が起こるのもまた事実なのである。真摯に勉強している多くの仲間たちには申し訳ないが、今回の「移動平均の形」は、筆者の経験則上、意外に「陰の極」になりやすい。今週は再び勝負どころを迎えたと思っている。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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