10年続く「孤独のグルメ」マンネリ化しない必然 原作者の久住さんにドラマの裏側を聞いた

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流行り廃りの激しいエンターテインメントシーンにおいて、長く続くシリーズ作品がぶち当たるのがマンネリの壁だ。人気作である一方、同じような内容がずっと続けば視聴者に飽きられる。

飽きられないようにするためのあの手この手のリニューアルが、ファンにとっては陳腐化に映るといった裏目に出ることも少なくない。しかし、久住氏にマンネリ化への意識を聞くと、そこへの危機感はない。

「毎日ふつうに食事することを誰もマンネリとは思わないですよね。人の生活のなかの空腹と食事、という繰り返しを描いているんです。同じようなものを食べていても、毎日同じ気持ちではないですよね。気合いを入れてグルメを食べに行くのではなく、お腹が空いたからなにか食べようという誰にでもある普通の行動。それを丁寧に描こうとすれば、いくらでもドラマはあると思います」

久住昌之さん(撮影:尾形文繁)

長く続いている店には必ず魅力がある

ドラマとしての構成は同じでも、そのバランスや内容は毎回異なり、それこそ知らない街の名もない飲食店を取り上げるネタは無限にある。そして、その見せ方にも、本ドラマならではの芯が通ったポリシーがある。

「長く続いているお店には、必ず魅力があります。それをどう見せるかではなく、どうしたら常連さんの気持ちで伝えられるかです。そのためにはお店ごとにそれぞれ最適な撮り方があり、それは店によって全部変わる。そう考えればマンネリとは無縁なはずです。そこを追求することがおもしろいドラマになり、視聴者にお店に行ってみたいと思ってもらえるんです」

実際、ドラマで取り上げられた飲食店には、常連になるお客さんが増えているという。パッケージ(ブルーレイ、DVD)の特典映像「追跡!その後のグルメ」では、ドラマでオンエアした飲食店を訪ねていた。この企画でも飲食店を応援する本ドラマの姿勢が表れている。

孤独のグルメ(C)2022久住昌之・谷口ジロー・fusosha/テレビ東京

コロナ禍で苦戦する個人経営の飲食店を積極的に取り上げていたときは、視聴者からも飲食業界からも賞賛や感謝の言葉が飛び交っていた。

本ドラマが、「1人でおいしい飲食店を探して自分なりのおいしいメニューを見つける喜び」をひとつの食の楽しみ方として一般的にした功績は大きい。この先もたくさんの飲食店を取り上げるとともに、食の多様性と多様な楽しみ方を提示していくことが期待される。

久住氏は「こういうドラマがどんどん増えてほしい。別に飲食店だけではなくて」と笑顔を見せた。

武井 保之 ライター

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たけい・やすゆき / Takei Yasuyuki

日本およびハリウッドの映画シーン、動画配信サービスの動向など映像メディアとコンテンツのトレンドを主に執筆。エンタテインメントビジネスのほか、映画、テレビドラマ、バラエティ、お笑い、音楽などに関するスタッフ、演者への取材・執筆も行う。韓国ドラマ・映画・K-POPなど韓国コンテンツにも注目している。音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク系専門誌などの編集者を経て、フリーランスとして活動中。

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