10年続く「孤独のグルメ」マンネリ化しない必然 原作者の久住さんにドラマの裏側を聞いた

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原作は、作・久住昌之氏、画・谷口ジロー氏による同名漫画。1990年代に月刊漫画誌に連載された後、2008年から2015年まで「週刊 SPA!」で新作を掲載。単行本2巻を発刊し、世界各国で翻訳出版されている人気漫画だ。

ドラマ版は基本的にはオリジナルストーリーになるが、スタッフは「孤独のグルメ」の世界観に合う飲食店を探しては久住氏に提案しているという。

また、もともとバンドをやっていた久住氏は音楽で参加するほか、セリフの監修も手がけることで、原作のこだわりと独特の雰囲気が映像でも色濃く反映されている。

シーズン10まで続いていることに久住氏は「漫画は2冊しかないのにそれを軽々と超える物語を作っていて、しかもちゃんと原作の流れが受け継がれている。スタッフに敬服します」と喜びをにじませながら、ドラマスタート当初を振り返る。

久住昌之さん(撮影:尾形文繁)

「1話8ページの漫画だったので、30分のドラマにするのは大変だろうと思いました(笑)。しかもメインの登場人物は1人だけで、主人公の頭のなかの言葉=独り言が中心になる静かなドラマになる。それを観てもらえるのか、好きになってもらえるのか、正直わからなかったです。でも、テレビ東京の深夜枠でひっそりやるくらいだからいいやって(笑)」

そんな思いに反して、本作はじわじわと話題になり、すぐにシーズン2の制作が決定。熱い固定ファンを増やしながらその後も続編が作られ、いまやスタートから10周年。シーズン10まで数えるとともに、ここ6年ほどは大晦日にNHK紅白歌合戦の裏でスペシャルドラマが放送されるテレビ東京の鉄板人気コンテンツになっている。

テレビの料理の取り上げ方に違和感

久住氏が原作の映像化に際してこだわったのは、料理をしっかり映すことだ。モノローグで主人公がただ食べるだけの姿を映している背景には、従来の情報番組のグルメコーナーなど、テレビにおける料理の一面的な取り上げ方への久住氏の違和感がある。

「いままでのテレビの食べ物の取り上げ方を雑だと思っていました。トークやお笑いで引き伸ばして、料理は『おいしい』ってひと言だけ。一般視聴者に向けたおもしろい番組作りなのかもしれませんけど、そういうことを徹底的に排除して、食べるところをひたすら細かく丁寧に撮っていきました。結果、繰り返し観るに耐えるものになり、また観たいと思ってもらえた」

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